2018 Fiscal Year Annual Research Report
ミラー対称性の観点から見たトーラスファイバー束の幾何構造
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18J10909
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小林 和志 千葉大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | トーラス / ホモロジー的ミラー対称性 / SYZ変換 / 連接層の成す導来圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
先に, 研究の背景について簡単に説明しておく. Xを複素トーラス, YをXのミラーパートナーとする. この組(X,Y)はSYZ構成によってある2つの自明なトーラスファイバー束として実現することができ, 深谷圏Fuk(Y)としてYのアファインラグランジュ多重切断とその上のユニタリ局所系の組を対象とするようなものを考えた場合, そのFuk(Y)の任意の対象に対してX上のある種の射影的平坦束を一意的に対応させることができると期待されている. 特に, それらの射影的平坦束は自然にDG圏DG(X)を成し, また, このDG(X)はX上の連接層の成す導来圏を生成するということが予想されている. 以下, 本年度の研究実施状況について述べる. まず, 上記のDG(X)の対象とFuk(Y)の対象との間の対応関係に関して, DG(X)の対象の同型類全体の成す集合とFuk(Y)の対象の同型類全体の成す集合との間の全単射を明示的に与えることができた. これは高次元トーラス上におけるホモロジー的ミラー対称性の研究において重要な基礎となる結果であり, 現在投稿論文を準備中である. 一方, 本来の研究計画に含まれていたわけではないが, 高次元複素トーラスX上において定義される, Bondal, Kapranovによる構成法に基づいてDG(X)から得られる三角圏の完全三角構造に関する研究結果も新たに得ることができたので, これについてもここで述べておく. 一般的に, DG(X)の3つの対象から成る完全三角系列を考えた場合, それは楕円曲線上における3つの射影的平坦束から成る完全三角系列から誘導されるものになっているということが期待できるが, 本年度, このことに関する部分的結果も実際に得ることができた. この結果は本研究報告書作成者の博士論文における主結果としてまとめられている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来の計画に沿った研究結果に加え, 当初の予定には含まれていなかった内容に関する部分的な研究結果も新たに得ることができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
高次元トーラス上におけるホモロジー的ミラー対称性に関しては今後も引き続き研究を行う. また, これに加え, トーリックファノ多様体上におけるホモロジー的ミラー対称性に関する研究もSYZ変換などを考慮しつつ行っていく予定である.
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