2018 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular characterization of compartmenting lamellae in comb plates of the ctenophore
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18J10941
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
城倉 圭 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | クシクラゲ / 有櫛動物 / 繊毛 / 運動解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
クシクラゲの櫛板は虹色に輝く美しい運動器官である。透過型電子顕微鏡で櫛板の横断面を観察すると数万本の軸糸が規則正しく整列しており、隣接した軸糸同士はダブレット微小管から伸びるCompartmenting Lamellae(CL)と呼ばれる構造によって繋がっている。私はこれまでクシクラゲ類のカブトクラゲからCLの構成成分の1つとして新規タンパク質CTENO64を同定し、CTENO64が櫛板の近位領域のCLに局在していることも明らかにした。本業務ではCTENO64に対するモルフォリノアンチセンスオリゴ(MO)をカブトクラゲの受精卵に注入することによってCTENO64の機能を解明することを目的とした。 給餌条件と光条件のコントロールによってカブトクラゲから人工的に放精放卵させ、MOを注入し、CTENO64の機能を阻害したモルファント幼生を得た。解析には200本程度の繊毛が束になり櫛板が完全に伸長した受精後30時間の幼生を用いた。蛍光抗体染色の結果からコントロールと比較してモルファントではCTENO64の発現が著しく減少していたが、櫛板の長さに有意な差はなかった。櫛板の横断面を透過型電子顕微鏡で観察したところ、モルファントにおいて約16%の軸糸でCLの欠損が観察された。高速度カメラによって櫛板の運動を撮影し、その波形を解析した。その結果、モルファントの櫛板の先端側(全長に対し根元から60-90%の領域)において曲率の最大値がコントロールよりも有意に増加していることが分かった。また、モルファントにおいては、その櫛板の繊毛打面が三次元的(平面打の崩壊)になっている個体が観察されたため、透過型電子顕微鏡像から櫛板繊毛軸糸の配向の解析を行った。その結果、コントロールでは櫛板内の軸糸が同じ向きに配向していた割合が80%以上であったのに対して、モルファントでは50%程度に減少していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以上の結果からCTENO64はCLの形成に関与し、軸糸の配向の決定に重要な因子であることが分かった。これまでクシクラゲの虹色に輝く運動器官である櫛板を用いてCLの構成成分の一つであるCTENO64の機能を明らかにした。この結果はいくつかの学会等で発表を行っており、様々な意見をもらい、それを取り入れて、現在論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
CLは櫛板の全長にわたって隣接した繊毛同士を繋いでいる。しかしCTENO64は櫛板の近位領域にのみ局在することから、他のCL構成成分も存在すると考えられる。架橋実験の結果からCTENO64が80 kDa前後のタンパク質と複合体を形成することが明らかとなったが、同定までは至らなかった。今後はLC-MS/MS解析による網羅的に櫛板の構成成分を同定や、免疫沈降法によってCTENO64を足掛かりに他のCL構成成分の同定を試みる。また櫛板の放つ虹色の構造色は、それを構成する繊毛軸糸が光の波長以下のレベルで規則的に配向し、周期的な超微細構造を形成することで生まれている。今回その軸糸同士を繋いでいるCLの構成成分の1つであるCTENO64の機能を阻害することで、この構造色の変化を観察できると期待していた。しかし、MOを用いたターゲット遺伝子の翻訳阻害による機能抑制ではが、CTENO64の機能を完全に阻害した状態のモルファント幼生を長期飼育維持することができなかった。今後は櫛板の規則性や近接性を再現できるような方向から構造色の発生原理などを解析できるような方法を用いて解析を行っていく。それに先駆けて今年度は大型放射光施設SPring8でX線を用いた櫛板の構造解析を行う予定である。これによってin vivoの状態での櫛板の内部の構造観察を行うことが可能となり、より詳細なCLや軸糸の構造を解析することが可能となる。
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