2018 Fiscal Year Annual Research Report
A study on distance teacher training using ICT in Bangladesh
Project/Area Number |
18J10960
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
山口(上舘) 美緒里 関西大学, 総合情報学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
|
Keywords | 国際教育協力 / 教師教育 / 理科教育 / 遠隔教育 / e-learning / 教員研修 / 教育開発 / 思考力育成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、バングラデシュの小学校教員に対して教師用ポータルサイトを構築し,①授業研究の質向上に向けた幅広い意見交換の場づくり②改訂教科書に即した教員の基礎的な教科(理数)・教育的知識の向上の2点について,有効性を分析することを目的とした。バングラデシュでは2015年より教科書が改訂され、これまでの問題演習型による暗記中心の教科書構造から、児童の思考に基づいた問題解決型の思考プロセスを重視した教科書へ大幅な転換がなされた。しかし、教員研修を受ける機会の乏しい教員は基礎的な教育・教科知識の欠如などの問題から教科書改訂の要点を理解できておらず、授業改善が起きにくいことが明らかになっている。そこで、基礎的な教師の知識を補完するe-learningを活用した教員用ポータルサイトを構築し、遠隔教員研修を実施した。また、教師の授業力向上には指導に関する知識だけではなく、臨機応変な発問の生成や児童との対話が重要であり、場面に応じた対応が重要である。そのため、実際に授業を行っている教師同士の意見交換が重要である。よって、ポータルサイトを通した教師同士の意見交換の場づくりを設定することも狙った。 2018年は、現地の選挙による情勢悪化を懸念し、教科を理科に絞って重点的に教材開発及び研修を実施した。遠隔教育において、受講者のエンゲージメントが課題であるため、半年に1回程度の対面研修を取り入れ、ブレンディッドラーニング型の研修を実施した。研究成果の分析を行うために、ポータルサイトのアクセスログ分析及び現地の授業実践ビデオ分析を行った。研究成果は国際学会(ICoME)や国内の教育関係の学会発表(日本教育工学会、日本教育メディア学会、国際教育研究フォーラム等)を通して研究成果の報告を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の進捗状況について、2019年1月に実施された現地首相選挙の影響を考慮し、当初の3組織の学校の中でも特に教員研修を受ける機会のないNGO小学校の1組織が保有する4校に焦点を当てて実施した。また、完全遠隔教員研修ではなく、半年に1回程度の限られた対面研修を実施し、教師との関係性を構築しながら遠隔研修へのエンゲージメントを高めるブレンディッドラーニング型の研修へ修正した。 研修内容について、理科の教科知識のみではなく、科学的な思考能力の育成を目標に加え、知識の習得と活用という2点に関して教材開発及び実践、分析を行った。具体的には、児童の思考プロセスを可視化する思考ツールを活用して知識の整理を授業に取り入れられるような指導案を作成し、暗記中心の授業展開から児童の思考や発言に基づいて授業が展開できるようなツールを導入した。 e-learningの開発及び実践については、当初の計画より時間を要し、2018年の4月にver.1を配布し、教師のフィードバックを基に修正版が配布できたのは2019年2月となった。また、e-learningの教材を管理するLMS(Learning Management System)の構築が教材の改訂に合わせた2019年2月となったため、それ以前の活用については直接聞き取りを行ったアンケートデータの収集に留まった。 全体的には当初の研究計画より修正はあったが、ブレンディッドラーニング型の研修により教師のモチベーションが向上し、多くの教師の授業が大幅に改善されたことは概ね研究の成果があったと評価できる。具体的には、教師の授業準備時間が増え、板書計画を用いた授業の流れが意識して準備され、児童との応答がスムーズになり、効果的に黒板が活用された暗記中心から児童の回答を基に授業展開がなされるようになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、2018年度中に変更を行った遠隔教育の方法(ブレンディッドラーニング)に基づき、教材の修正及び成果や課題の分析を行う。また、教科書改訂の要点の1つである思考力育成について、思考ツールを用い、思考のプロセスの可視化や情報の整理などを通した思考力育成に関する授業スキルの要素を追加する。 具体的には、e-learningの利用ログと授業分析を基にして、特に変化の大きかった教師に対する個別インタビューを実施し、質的な成果分析を実施する。現在、サンプリングしている対象教員は、対面研修の一環として実施した2度の本邦研修に参加している教員と参加していない教員を選出しており、対面研修を含めたブレンディッドラーニング型の研修成果と参加していない教員のモチベーションの向上や授業改善の要因について、より詳細に追跡した分析を行う。 また、e-learningの分析について、企業が開発しているLMSを導入したことにより、1つ1つの閲覧ログの分析が可能となり、どこで再生を止めて詳しく見たのか、飛ばしたのか、早送りしたのかなどについて詳細に分析可能となった。このログを活用し、バングラデシュ教員の閲覧タイプの分類やタイプ別の授業改善の分析等を行う予定である。
|
Remarks |
国際教育研究フォーラム,「バングラデシュの教員研修」,口頭発表,2018年6月 Joint Research Seminar of International Education Research Forum and Education Research on “Third World", 「バングラデシュ教員の思考スキルの特徴と指導力育成の課題」,口頭発表,2018年11月
|