2018 Fiscal Year Annual Research Report
縮環π拡張重合反応を用いたグラフェンナノリボンの精密化学合成と物性解明
Project/Area Number |
18J10996
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
矢野 裕太 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
|
Keywords | グラフェンナノリボン / 縮環π拡張反応 / PAH |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は多環芳香族炭化水素(PAH)のK領域選択的な直接π拡張重合反応(APEX重合反応)をリビング重合化することにより、幅や端の構造、長さを制御したグラフェンナノリボン(GNR)の新規合成法の開発を行なった。 高分子合成化学において広く認知されているリビング連鎖重合反応の概念をAPEX重合反応に適用すべく、一回のAPEX反応後に新たな反応点であるK領域が生じるモノマーを新たに設計・合成した。合成したモノマーを用いてAPEX重合反応を行なった結果、幅や端の構造に加えて長さをも制御されたGNRを一段階で合成することに成功した。本反応は反応に用いる開始剤とモノマーのモル比に応じて10 nm~170 nmのGNRを長さ分布を制御しながら合成することが可能であった。また、得られたフィヨルド型GNRはFeCl3を用いた脱水素環化反応によってアームチェア型GNRに変換することも可能であった。得られた一連のGNRは各種分光分析や顕微鏡観察によりその生成を確認した、 本研究で開発したリビングAPEX重合反応は、構造が精密に制御されたGNRの一段階合成法であるのみならず、一段階で二つのC-C結合を形成しながら重合反応が進行する新規重合法である。また、本反応で得られたGNRは初の長さが均一なGNRであり、今後GNRの物性の長さ依存性についても調査する予定である。これらの研究成果は論文にまとめて投稿するとともに、学会発表を行なった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、幅・端の構造に加えて長さをも制御したGNRの精密化学合成に成功した。また、合成したGNRの構造解析や重合反応の高分子合成化学的解析により、本重合反応がリビング連鎖重合性を有していることを明らかにした。以上より、概ね順調に研究が進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今回、幅・端の構造・長さを制御したGNRの一段階合成法を開発することができた。本重合法はモノマーユニットを変更することにより、様々な幅や端構造、長さを有するGNRの合成が可能であると期待させる。これらの知見をもとにR1年度には種々のGNRを合成するとともに合成した種々のGNRの物性解明と応用研究を行う。合成したGNRに対して光物性や酸化還元特性、磁性、電気伝導性などを測定することでGNRの構造と物性の関係について明らかにする。また、成膜したGNRフィルムの自己組織化能や物性の構造依存性についても調査する。グラフェン上への組織化条件を精査して、GNRの電子デバイス応用を目指す。さらに、合成したGNRは有機色素太陽電池のアクセプター分子としても期待されるため、実際に有機色素太陽電池デバイスを作成して性能評価を行う。
|
Research Products
(2 results)