2018 Fiscal Year Annual Research Report
イオンダイナミクスが誘起する有機無機ペロブスカイトの単一粒子発光スイッチング
Project/Area Number |
18J11215
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
狩俣 出 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 有機鉛ハロゲン化物ペロブスカイト / ハロゲン交換 / 単一粒子分光 / その場観察 / ナノ粒子 / コア-シェル |
Outline of Annual Research Achievements |
有機鉛ハロゲン化物ペロブスカイトにおけるハロゲン交換反応を制御するために、交換反応に用いるハロゲン化物塩の検討を行った。溶媒中で進行するハロゲン交換反応は、ペロブスカイトとハロゲン化物塩の間でハロゲンイオンが交換することで進行する。この時、ハロゲン化物塩におけるハロゲンイオンとカウンターカチオンの親和性によって交換反応の速度に違いが生じることが予想される。そこで、ハードソフト酸塩基則に従い、ハロゲンイオンとの親和性が異なるカウンターカチオンからなる塩を用いて交換反応を行った。ヨウ素体のペロブスカイトナノ粒子の分散液にハロゲン化アンモニウム塩を加え、発光スペクトルのピークシフトから交換反応の速度を解析した結果、ソフトな塩基であるヨウ素イオンとの親和性が高くなるほど、交換反応の速度が速くなることが分かった。固体のイオン交換反応において、ハードソフト酸塩基則が適用できることが明らかになり、カチオンとの親和性によって、ペロブスカイトのみならず、固体のイオン交換反応を制御できることが分かった。 次に、ハロゲン交換反応に伴う結晶構造の相転移を明らかにするために、蛍光顕微鏡を用いた単一粒子発光観測を行った。ヨウ素体のナノ粒子に臭素イオンを反応させると、ヨウ素体の発光が減少した後に、臭素体の発光が一段階で急激に表れることが分かった。また、ヨウ素体の発光が消えて臭素体の発光が現れるまでの間、発光を示さない暗状態が観測された。これは、交換反応の途中で、欠陥が多い中間状態が過渡的に生成し、臭素体の結晶構造に転移する瞬間に臭素体の発光が観測されたと考えられる。この発光を示さない中間状態は、これまでに報告された例はなく、単一粒子発光観測でしか観測できないものである。イオンの交換、拡散によって中間状態が生成し、光機能を著しく低下させることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単一粒子発光観測によって、有機鉛ハロゲン化物ペロブスカイトにおける交換反応をその場観察し、イオンの交換、拡散に伴う発光挙動の観測に成功した。また、交換反応を制御するための重要な知見を得ることができた。単一粒子発光観測でしか観測できない現象を明らかにすることができたが、交換反応の条件検討、および蛍光顕微鏡下で観察するためのフローシステムの構築に想定以上の時間を要した。以上より、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
交換反応を蛍光顕微鏡下で観測するための反応条件、フローシステム、および測定システムの構築に成功した。今後は、単一粒子発光観測で明らかになった暗状態の結晶構造を明らかにする。また、暗状態の温度依存性を調べることで、結晶構造変化の熱力学的安定性を明らかにし、イオンダイナミクスとの関係性を明らかにする。
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