2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18J11233
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
立石 卓也 北海道大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 超弦理論 / トーラスコンパクト化 / フレーバー / レプトン / クォーク / モジュラー変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
超弦理論から素粒子標準模型を導出するうえで、フェルミオンのフレーバー構造を再現することは重要な課題である。本年度は、超弦理論のコンパクト化と有効理論におけるフレーバー構造の対応に関する研究を重点的に行なった。 磁場中のトーラスコンパクト化を行うとフェルミオンに世代構造が現れ、それらの波動関数はトーラスの幾何を定めるモジュライに依存する。トーラスにはモジュラー対称性と呼ばれる幾何学的な対称性が存在するため、トーラス上の波動関数もモジュラー対称性を反映した性質を持つことが予想された。そしていくつかの場合について波動関数のモジュラー変換に対する振る舞いを調べ、波動関数がモジュラー群の部分群であるS3対称性やA4対称性といった非可換離散群を含んだ群の表現として振舞うことを明らかにした。S3やA4対称性は、フレーバー模型の研究においてよく用いられる対称性である。今回得られた研究成果は、単なるS3やA4ではなくそれらを含んだ複雑な対称性ではあるが、超弦理論とフレーバー模型の間をつなぐ役割を果たすことが期待できるために重要である。 上の結果を踏まえて、モジュラー群の部分群のS3対称性をクォークに、A4対称性をレプトンに課したフレーバー模型を構築し、クォーク・レプトンの質量と混合角の実験値の再現を行い、模型に課される観測からの制限を明らかにした。この模型では、S3やA4対称性がモジュラー群由来であることに起因する特殊な性質を持っている。そのため、この研究はフレーバー模型を構築するための新しいアプローチであるという点で重要である。 また、オービフォルドの固定点上にFI項を導入した場合のフェルミオンの波動関数の振る舞いを調べ、クォークの質量と混合角の実験値を大まかに再現できることを示した。この研究は、クォークのフレーバー構造を再現する上で有用な模型構築の方法を発見したという点で重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では先に[1]モジュライ固定を行い、次いで[2]素粒子標準模型の各種パラメータの再現方法の調査を行う予定であった。 これまでの状況では、[2]のうちのフレーバー構造の再現のための方策が明らかになったため、先に[2]を行っている。 これに関して、トーラスコンパクト化に由来するモジュラー対称性とフレーバー構造に関する研究成果、およびモジュラー対称性を有するフレーバー模型の現象論的な研究成果を論文で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行中のコンパクト化とフレーバー構造に関する研究を継続して行い、その後にモジュライ固定を調査する予定である。
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