2018 Fiscal Year Annual Research Report
Enantio- and Chemo-selective Hydrogenation of a,a-disubstituted malonic acid
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18J11274
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中根 智志 名古屋大学, 創薬科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 不斉 / 水素化 |
Outline of Annual Research Achievements |
化学選択的エステル類の水素化反応開発 マロン酸ジメチル・コハク酸ジメチル・グルタル酸ジメチル・アジピン酸ジメチルといった直鎖状ジエステルを対象にし、反応性を調査したところ、マロン酸ジメチルは非対称化されたb-ヒドロキシエステルが定量的収率・完全な化学選択性で得られた。他のジエステルはほとんど反応性を示さないことがわかった。これより、2つのエステルが隣接することでカルボニル炭素の反応性を向上させていることに加え、二度目の水素化反応は求引性のエステル基が存在しないため反応が停止することがわかった。このような電子的性質を見分けることができる触媒系を開発できたので、共役系によって2つのエステル基を繋いだ基質であるフタル酸ジメチル類にも適応できると考えた。実際に先の条件で反応を行うと、テレ・イソフタル酸ジメチルで良好な化学選択性を発現した。フタル酸ジメチルは還元されて生じた水酸基が隣接するメチルエステルへと巻き込んだ反応性の高いラクトンを形成するため、ジオールの生成が見られた。また、種々の芳香族ジエステルでも本法は高い化学選択性を有すことも明らかとした。 エナンチオ・化学選択的エステル類の水素化反応開発 α,α-二置換マロン酸ジメチルのエナンチオ・化学選択的水素化を目指した。標準条件で用いている配位子PN(H)Nでは標準基質で80:20 erにとどまっていることから、まずは反応条件の最適化と配位子構造のチューニングを行った。溶媒、温度、水素圧、基質濃度、触媒濃度、添加剤、PN(H)N配位子のピリジン部位、ホスフィン上の置換基、ビナフチルバックボーンの検討を行ったが、反応性の減少とエナンチオ選択性の低下が観測されたのみであった。化学選択性は依然として良いことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
“化学選択的エステル類の水素化反応開発”では完全な化学選択性の発現を達成することができた。また、芳香族化合物で2つのエステルをつないだ化合物でも良好に反応が進行することを明らかにした。一度目の反応が進行し、第1級水酸基を生じたとき、ラクトンを形成できる位置にもう1つのエステル基がある基質ではジオールの形成が見られる傾向にあった。また、基質内に3つのエステル基を持つ化合物においても本法は有効であることを見出した。すなわち、マロン酸ジメチル部分とアジピン酸ジメチル部分を持つトリメチル1,1,4-ヘキサントリカルボキシラートに関して標準条件で反応を行ったところマロン酸ジメチル部分が99%以上の化学選択性かつ定量的収率で還元されたモノオール体を得た。 “エナンチオ・化学選択的エステル類の水素化反応開発”に関しては、α,α-二置換マロン酸ジメチルを基質とした4級不斉炭素構築を目指し、条件の検討を行った。初期検討では定量的収率、完全な化学選択性、80:20 erを獲得したが、のちの配位子構造のチューニングではエナンチオ選択性の向上が見られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
エナンチオ・化学選択的エステル類の水素化反応開発 エナンチオ選択性の向上が最大にして最後の課題である。現在、生成物の絶対立体配置を決定することができたため、それより想定されるTSからさらなる配位子の検討を行う所存である。特に、補助配位子兼溶媒としての役割を果たすdmsoに着眼した。dmsoはPN(H)N配位子の持つsp3Nのtransに位置しており、その酸素原子とピリジン環のC(6)-Hとの水素結合が示唆されている。これによってdmsoはsp2N-Ru-S-Oの二面角がほとんど0°に固定され、明確なキラル環境を提供する。そこでスルホキシドの置換基を種々検討し、エナンチオ選択性の変化を調査する。また、dmsoのような電子受容性の高い補助配位子としてホスフィンオキシドを想定した。これによる触媒の合成を行うとともに反応性と選択性の向上を図る。
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