2018 Fiscal Year Annual Research Report
非モデルボルボックス近縁種を用いた雌雄同株種進化の分子遺伝学的基盤解明
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18J11391
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 荷葉子 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 雌雄同株 / ホモタリック / 性染色体領域 / 性決定遺伝子 / MT / MID / ボルボックス / ボルボックス系列 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、性進化のモデル生物群であるボルボックス系列から、近縁な卵生殖ボルボックス2種(雌雄同株種Volvox africanus, 雌雄異株種V. reticuliferus)に着目して両種を比較解析することで、雌雄同株種・異株種の進化についての分子遺伝学的基盤解明を目的としている。 雌雄同株種V. africanus, 雌雄異株種V. reticuliferus雄株・雌株について、国立遺伝学研究所豊田敦教授との共同研究で、illumina とPacbio 複合により得た全ゲノム解析を行い、まず雌雄異株種V. reticuliferus 雄株・雌株について核ゲノムの比較解析から約1Mb のMT(性特異的領域)を決定した。更に、RNA-Seq、遺伝子モデル予測からアノテーションを行い、25 の雌雄共通遺伝子と雄雌それぞれ3 の性特異的遺伝子が明らかになり、中にはV. carteri には存在しないFUS1 遺伝子と新規性特異的遺伝子が含まれていた。既知のボルボックス系列MT と比較解析を行い、MT がボルボックス属のMerrillosphaera 節で1Mb に拡大したことが示唆された。 雌雄同株種V. africanus については、雌雄異株種V. reticuliferus のMT との比較解析から、MT に相同な領域を発見した。ボルボックス系列のオス特異的遺伝子MID およびMTD1 が雌雄同株種V. africanus においてMT 相同領域外の別contig に存在することが明らかになった。 今後、MT 相同領域及びMID/MTD1 周辺領域についてはRNA-Seq の結果も複合してアノテーション・発現解析を行い、雌雄異株種MT からの進化経路を推定する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
凍結融解法によって全ゲノム解読のためのクオリティの高いDNAを抽出することに成功し、当初の予定通り、全ゲノム解読が3株で完了した。雌雄異株種V. reticuliferusについて雄株雌株の比較から約1MbのMTを決定した。新たにRNA-Seqを行った結果と遺伝子予測から得られたV. reticuliferusMTのアノテーションにより、既知のMT情報と合わせてMT領域拡大についての論文が作成中である。 また雌雄同株種については、MT相同領域を比較ゲノム解析から発見し、雌雄異株種からのMT進化経路を推定する足がかりを得ることができた。 以上の結果から本年度の研究課題は順調な進展が見られると結論づけた。
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Strategy for Future Research Activity |
雌雄異株種V. reticuliferusのMTについて、既知のMT情報と合わせて、MT がボルボックス属のMerrillosphaera 節で1Mb に拡大したと結論づけた。この内容で論文が作成中である。 雌雄同株種V.africanusのMT相同領域及びMIDMTD1周辺領域については、RNA-Seqの結果も複合してアノテーション・発現解析を行う。雌雄異株種V. reticuliferusの上記の研究で得られた新規の性特異的遺伝子の有無、およびMT上遺伝子の系統解析、周辺領域の雌雄異株種MTとの比較から、雌雄同株性の進化経路を推定する予定である。
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Research Products
(6 results)