2018 Fiscal Year Annual Research Report
Acoustic diagnosis of voice disturbance using an analytical model of speech production
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18J11476
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
横田 和哉 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 声帯 / 声道 / 発声障害 / 音声生成 / 集中系モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
喉頭がんなどの声帯付近に発生する疾患では,発声障害が初期症状として現れる.このような疾患に対する現状の音声検査法(GRBAS尺度)は客観性に乏しいという問題がある.音声検査において,病変に近い声帯の流速変動波形(声帯音源波形)を知ることができれば,より正確に疾患の状態を知ることができる.本研究では,声道内の空気をばね・質点系で構成される集中系でモデル化し,測定した音声データから声帯音源波形を逆解析する手法の確立を目的とする. 30年度は,本研究で提案する声帯音源逆解析手法の妥当性を確認するために,人間の発声器官を模した実験装置を製作した.30年度以前の実験装置は,加振器を用いて声帯振動を機械的に模擬するものであったが,30年度に製作した装置は,声帯部を気流により自励振動を行うウレタンエラストマー製の人工声帯弁とした.この人工声帯弁とアクリル製声道模型を組み合わせ,弁に圧力を加えることで音声を生成する,より人間に近い条件を模擬する実験装置を製作した.この実験装置で測定した音声から逆解析した声帯音源と,レーザードップラー流速計で測定した声帯音源は概ね一致しており,提案法による発声障害診断の見通しが立った. また,声帯部の病変による声帯音源波形変化の物理的メカニズムを明らかにすることができれば,疾患の程度や治療後の変化など,診断に有用な知見を得ることができる.30年度は声帯振動モデルを作成し,既存の声道解析モデルと組み合わせた,音声生成解析モデルを作成した.このモデルを用いて,声帯に擬似的な病変パラメータを与えてシミュレーションにより生成した声帯音源波形は,実際の病的音声を提案法により逆解析した波形と似た傾向を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
30年度は自励振動を行う人工声帯弁を備えた実験装置を製作し,提案法の妥当性を確認する予定であった.実際に30年度は実験装置を製作し,実験装置で測定した音声から逆解析した声帯音源波形と,レーザードップラー流速計で測定した音源波形が概ね一致することを確認した. また,30年度は当初の予定通り,声帯振動をモデル化し,声道解析モデルと連成された音声生成解析モデルを作成した.本モデルに病的パラメータを与え,シミュレーションにより生成した声帯音源波形は,実際の病的音声を提案法により逆解析した波形と似た傾向を示した. これにより,本研究課題はほぼ計画通りに進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
30年度は声帯自励振動を含めた発声機構のモデル化を行ったが,声帯振動解析モデルの妥当性は実験的に確認されていない.30年度に作成した声帯振動解析モデルはishizakaらの2質量モデルに基づいているが,本モデルの妥当性確認と改良のためには,30年度に製作した実験装置による測定結果との比較が必要である.また,シミュレーションにより生成した病的音源波形と逆解析された病的音源波形が似た形状を示すことを確認したが,波形の比較にとどまっており,病変が発声障害に及ぼす影響の物理的メカニズムは未だ明らかでない. これらの課題に取り組むため,31年度は30年度に製作した実験装置を用いて,音声生成解析モデルの改良を行う.改良にあたっては実験装置を用いた各種測定を行う.実験装置の声帯流速はレーザードップラー流速計により測定され,人工声帯弁の挙動はハイスピードカメラで測定される.また,弁前後の流体解析を行うため,補助的にCFDを用いる.音声生成解析モデルの妥当性を実験により検証しながら,解析モデルの剛性・質量を変化させることで擬似的な病変を付与し,病変と発声障害の物理的因果関係を明らかにする.声帯振動は声帯同士の衝突など非線形性を持つ振動であるため,線形固有値解析に加えて,シューティング法を用いた非線形振動解析を行う.これらの検討を通して,病変と声帯振動の間の物理的メカニズムを明らかにし,疾患の程度や治療後の変化など,診断に有用な知見を得る. 以上の内容を整理し,音声測定条件(測定する母音の種類や声の高さ)を最適化した上で,音声診断手法としての確立を目指す.
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Research Products
(4 results)