2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of fatigue resistant alloys with reversible FCC/HCP transformation
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18J11524
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田崎 亘 筑波大学, 数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | Co-Cr-Mo-Ni / マルテンサイト変態 / ε-TRIP / TWIP / ステント材料 / 疲労破壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
Co-Cr系合金はバルーン拡張型冠動脈用ステントとして利用されている。一方で近年、特に屈曲した冠動脈での疲労破壊を伴うステント断裂が報告されるようになり、ステント用合金の疲労特性の改善が求められている。Co-Cr系合金はFCC相とHCP相の相安定性と積層欠陥エネルギーの高低に応じて変形双晶やFCC→HCP変態等の多様な塑性変形様式を示す。近年Fe-Mn-Si系合金において引張圧縮変形下で可逆的に生じるFCC相とHCP相の相変態が低サイクル疲労特性を改善しうること、またFCC→HCP変態が起きる上限の温度 (Md) が室温の直上となる相安定性において長疲労寿命が現れることが報告された。本研究ではCo-Cr系合金が類似の塑性変形様式・結晶構造を有することに着目し、相安定性と積層欠陥エネルギーの制御により低サイクル疲労特性に優れるCo-Cr系合金を開発することを目的とした。 実用ステント用材料Co-20Cr-10Mo-35Ni (wt. %) 合金をモデルとして、Ni-Co置換を行った組成についてCALPHAD法によりMdが室温の直上となる組成を予測し、Co-20Cr-10Mo-(20, 23, 26, 29, 32, 35)Ni合金を作製した。引張破断後の試料についてX線回折測定、組織観察、方位解析を行い塑性変形様式の実験的な確認を行った。x < 32 ではHCP相が、x > 23 では変形双晶が生じ、x = 26, 29 合金ではHCP相と変形双晶の両方が生じること、Mdが室温の直上となり優れた低サイクル疲労特性を示しうることが明らかとなった。これらの合金についてひずみ制御引張圧縮疲労破断試験 (ε = ± 0.01)を行い、x = 26, 29 合金が実用材料である x = 35 合金と比較して2.5倍の低サイクル疲労寿命を有することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、FCC相とHCP相の相安定性の制御を行ったCo-20Cr-10Mo-xNi合金について、その塑性変形様式を明らかにした。これら合金の引張特性・疲労特性を調査し、塑性変形様式が引張特性・疲労特性に及ぼす影響を明らかにした。室温で良好な引張特性と低サイクル疲労寿命を示す合金を開発することができた。またこれらの合金では引張変形下においてHCP相と変形双晶の両方を生じていた。これらの結果と考察をまとめ、現在国際誌への投稿を準備している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題において、2年次の計画としてCo系合金のFCC相とHCP相のモル格子体積差やHCP相のc/a比等の相変態の可逆性に及ぼしうる結晶構造パラメータについて検討を行う予定であった。一方で1年次において、良好な引張特性・低サイクル疲労寿命を示した合金においてはその塑性変形にHCP相だけでなく変形双晶が関与していること、HCP相の体積率が想定よりも少ないことが明らかとなり、HCP相と変形双晶の発達がこれら合金の塑性変形挙動・力学的特性に及ぼす影響についてより詳細な調査が必要となった。このため、2年次の計画を変更し、異なる塑性変形様式を示すCo-20Cr-10Mo-xNi合金を用い、HCP相と変形双晶の発達過程の詳細な調査を行い、これらの微細組織が塑性変形挙動と力学的特性に及ぼす影響について明らかにすることを目的とする。
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