2018 Fiscal Year Annual Research Report
接合上皮に高発現するメカノレセプターTRPV4を標的とした歯周病制御
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18J11575
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉本 怜子 九州大学, 歯学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 歯周病 / 歯肉 / 接合上皮 / TRPチャネル / メカノセンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周病は、歯肉接合上皮により形成される歯と歯肉上皮の界面が細菌感染によって破壊されることにより発症すると考えられている。本研究では、歯肉接合上皮が硬いエナメル質に直に接すること、口腔粘膜の他の部位に比べて細胞のターンオーバーが速やかであることが接合上皮の脆弱性ひいては歯周病の発症に関係することに着目した。私たちはこれまでにセルセンサーとして機能するtransient receptor potential (TRP) イオンチャネル群が口腔粘膜上皮に発現し、中でもTRP vanilloid 4 (TRPV4) が細胞間接着の制御に関与すること、またTRPV4は歯肉接合上皮に強く発現することを見出した。そこで本研究では、接合上皮の特性がTRPV4の機能により制御されることを明らかにし、TRPV4が歯周病治療の新たな標的となり得るかどうかを探ることを目的とした。 培養歯肉上皮細胞をTRPV4 アゴニストおよびアンタゴニストを用いて刺激し、TRPV4活性化によって細胞間接着が緊密になることをE-cadherin, F-actinの免疫細胞化学により明示した。また、細胞移動がTRPV4の活性化により抑制されることがわかった。さらに、マウス個体レベルでの口腔粘膜創傷治癒モデルを用いた検討を行い、TRPV4遺伝子欠失マウスでは再上皮化が促進され創傷治癒が促進されるとの結果を得た。TRPV4の機能を明らかにするため、TRPV4下流シグナルとしてアクトミオシン細胞骨格に着目した。超解像度レーザー顕微鏡による観察により、TRPV4活性化は、細胞が発揮する力に関与するミオシン関連分子の細胞内局在に変化をもたらすことを見いだした。また、接合上皮組織の形態学的特徴を明らかにするための定量的な画像解析方法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞間接着関連分子の解析や細胞移動の解析などの本年度計画した研究内容は概ね遂行できた。また、ノックアウトマウスを用いた個体レベルでの解析も一部進行したことから、本年度の研究は概ね順調に進展している。接合上皮細胞が基質の硬さなどの微小環境により活性化するのか、またTRPV4が関与するのかを確認するための、カルシウムイメージング実験の条件検討に時間を要したため、予定していた実験の一部を継続して推進している。
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Strategy for Future Research Activity |
硬さの異なる基質上で培養した歯肉上皮細胞はTRPV4アゴニストに対する反応性が異なるとの結果を得ており、次年度詳細を検討していく予定である。また、歯周病に対するTRPV4関連薬剤の影響を明らかにするため、マウス歯周病モデルを用いた解析を進めていく。
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