2018 Fiscal Year Annual Research Report
形態的・化学的に異方的な新奇ゲル微粒子の創製・評価と生体分子モデルへの応用
Project/Area Number |
18J11622
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
渡邊 拓巳 信州大学, 総合工学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
|
Keywords | エマルション / 乳化重合 / ゲル微粒子 / 複合材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請は、ゲル微粒子存在下で実施する乳化重合法により、形態的・化学的共に異方的な複合ゲル微粒子の合成およびその構造制御を実現することを目的としている。また、それら複合ゲル微粒子の集積体形成過程を詳細に評価することで、生体分子の凝集過程との類似性を見出す。上記目的の実現に向け、本年度は以下の通り焦点を絞り研究を実施した。 まず、複合ゲル微粒子生成メカニズムの解明を目指し、ゲル微粒子のやわらかさやサイズ、疎水性などの各特性が複合ゲル微粒子構造に与える影響を調査した。その結果、ゲル微粒子の水和状態や架橋密度に関わらず、複合ゲル微粒子の作製が可能であることが明らかとなり、複合ゲル微粒子のやわらかさを制御するための微粒子設計指針を得た。また、水和したゲル微粒子内部の高分子電解質部位を避けてポリスチレン微粒子は形成し、ゲル微粒子の水和状態ではなく、高分子電解質ゲルの空間配置が複合構造の制御において重要であるという結論に至った。さらに、クライオ電子線トモグラフィー解析を微粒子評価法に取り入れ、複合ゲル微粒子の水膨潤状態の三次元構造評価を可能とした。 また、それら複合ゲル微粒子の水油界面での集積検討も実施した。複合ゲル微粒子でエマルションを形成すると、母体となるゲル微粒子より優れた親油性を示した。結果として、ゲル微粒子をシード重合法で機能化することで、様々な極性の油を用いて、water in oil型のエマルションの作製が可能となった。水油界面での集積技術を確立し、目的の一つである生体分子の集積挙動との類似性検討にも取り組んでいる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的である異方性ゲル微粒子の作製および構造制御検討は、完全には達成できていないものの、多様な特性を有するゲル微粒子に対し、油溶性モノマーを染み込ませる手法は確立できた。また、最終年度に予定している複合ゲル微粒子集積化検討に向けて、基礎的な観察技術も確立している。それらの結果を学術論文で報告しており、申請計画は、おおむね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
目的の一つである、構造的・化学的に異方性を有するゲル微粒子の合成に向けて、ゲル微粒子と油溶性モノマーの相分離を活用したシード重合を実施する。ゲル微粒子と油溶性モノマーを十分な時間混合し、ゲル微粒子内部に油溶性モノマーが染み込む工夫を取り入れる。併せて、相分離状態の制御において必要なゲル微粒子と油との相溶性に関する知見を得るため、モノマーの染み込み時間を要さない、ゲル微粒子存在下における乳化重合検討も引き続き実施する。現在検討が進んでいるスチレンモノマーを用いた重合のみでなく、多様なモノマー種を用いた乳化重合を実施し、ゲル微粒子へ固定化できるポリマー種の拡張を目指す。 最終年度であるため、上記重合検討と併せて、複合ゲル微粒子の集積化検討にも着手する。集積場には水/油、気体/水の両界面を選択し、複合ゲル微粒子が自発的に集合体構造を形成する挙動を顕微鏡で観察する。得られる集積体構造や、集積する速度などを解析し、生体分子との類似性を見出すことで、ゲル微粒子が生体分子のモデルとなりうることを示す。
|
Research Products
(9 results)