2018 Fiscal Year Annual Research Report
甲状腺ホルモンとリガンドの結合におけるハロゲン原子の受容体結合力増強機構の解明
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18J11638
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
袈裟丸 仁志 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 甲状腺ホルモン受容体 / 核内受容体 / サイロキシン / ハロゲン原子 / ハロゲン結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
核内受容体・甲状腺ホルモン受容体(TRs)は、全身の細胞に発現し、トリヨードチロニン(T3)やチロキシン(T4)が結合することで活性化し、細胞の代謝を向上させる。TRの内在性リガンドであるT4は、分子中に4つのヨウ素原子を持つが、チロキシン類縁体のホルモン活性はヨウ素の位置や数に依存すること、ヨウ素を持たないチロニンはTRに対して活性を示さないことが報告されている。本研究の目的は、TRとT4をはじめとするTR結合性リガンドとの間の結合においてハロゲン原子が分子メカニズムを解明し、チロニン誘導体の受容体結合機構の解明と定量的な化学物質の核内受容体結合性予測法の確立を目指すことである。甲状腺ホルモン受容体のリガンド結合性の評価には、一般にヨウ素を放射標識したトレーサーを使用した結合試験が一般的であるが、これらの結合試験は特にヨウ素原子を標識したリガンドの生体への有害性から取り扱いに専用の施設が必要となる。そこで本年度はこれらの甲状腺ホルモン受容体結合性リガンドの結合性評価において、結合試験のトレーサーとして用いる蛍光標識リガンドのデザイン、合成を試みた。 初めに、甲状腺ホルモン受容体α型、およびβ型(TRα, TRβ)の報告されているすべての構造に対し、ドッキング計算を行うことでT4, T3との複合体の構造を予測し、既報のX線結晶構造との再現性を検証した。これらの計算結果をもとに、以降の実験で使用する蛍光リガンドのデザインを行い、T4-C6-NBDがTRα, TRβ両方の受容体に対し高い結合性を示したため、T4-C6-NBDを以降の結合試験のトレーサーとして使用することとした。現在、計算によりデザインしたT4-C6-NBDを合成し、その結合性を評価することを試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の計画はチロニン誘導体の合成、分子軌道計算およびHPLCカラム溶出試験によるチロニン誘導体の分子間相互作用解析であり、チロニン誘導体の合成スキームを確保したものの、合成したチロニン誘導体の相互作用解析には至らなかった。しかし、当初の予定では放射標識トレーサーを用いる予定であった結合試験について、専用の設備を必要としない蛍光トレーサーの開発に成就し、また、2年目に計画していたチロニン誘導体の結合競争試験、および受容体-チロニン誘導体複合体のX線結晶構造解析の実験系の構築を行ったことから、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、合成した蛍光トレーサーを使用してチロニン誘導体の甲状腺ホルモン受容体に対する結合性の評価を行い、チロキシンと甲状腺ホルモン受容体との結合性におけるヨウ素原子の寄与を明らかとする。そして、特に相互作用の寄与の大きいヨウ素原子の位置や、受容体のアミノ酸残基に対し、分子軌道計算による相互作用エネルギーの定量的な評価や変異体解析による解析を行い、受容体とリガンドの間の結合における役割を明らかとする。これら研究によって、甲状腺ホルモン受容体とリガンドとの間の結合にいてのハロゲン原子の結合の分子メカニズムの解明、およびチロニン誘導体の受容体結合機構の解明と定量的な化学物質の核内受容体結合性予測法の確立を目指す。
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Research Products
(7 results)