2018 Fiscal Year Annual Research Report
LHC-ATLAS実験における超対称性グルイーノの探索
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18J11740
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宇野 健太 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | LHC / ATLAS / 超対称性粒子 / BDT |
Outline of Annual Research Achievements |
超対称性理論は、暗黒物質や階層性の問題を解決できるため、標準模型を超える有望な理論の一つである。超対称性粒子グルーオンの超対称性パートナー (グルイーノ)はカラー荷をもつため、陽子・陽子衝突における生成断面積が非常に大きく、LHCで発見感度がある。そのため、2015年に再稼働したLHC-ATLAS Run2実験で取得した全データ約139 fb-1を用いて超対称性粒子グルイーノ探索を行っている。本研究では、新しく機械学習を解析に取り入れた。 機械学習を導入する際の困難の一つは、超対称性粒子の質量によって運動量分布が変わることである。そのため、本年度は幅広い質量領域で良い発見感度をもつ学習方法の研究を行った。 まず、終状態のジェット間の相関が発見感度改善の鍵になることを示した。これにより、終状態のジェットのアクテビティが似ている質量領域で学習カテゴリ分けする。終状態のジェットはグルイーノとLSPの質量差に依存することを活用して、本研究ではその質量差ごとに学習カテゴリ分けをした。これにより、カテゴリごとに効率の良い信号事象と背景事象の分離が可能になった。 また、従来は背景事象の運動量分布を1つ用いて、データとモンテカルロシミュレーションのズレを補正していた。本研究では、12個の変数を追加した機械学習の出力値の分布を用いて丁寧に評価を行なった。これにより、データを用いた補正は、12個の変数分布とその相関を考慮していることになる。結果として、データによる補正後のモンテカルロシミュレーションの様々な分布がデータをよく記述していることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、機械学習を解析に取り入れることである。その際に、クリアしなければいけない課題が下の2つある。 1.全領域での感度向上方法について グルイーノとニュートラリーノの質量差が同じ信号は近いkinematicsを持つ。なぜなら、放出されるジェットの運動量が、その質量差でおおよそ決まるからである。そこで、その質量差ごとに学習カテゴリ分けを行った。これにより、最適化していない信号にも感度を持たせることができた。 2. 実データを用いた変数間の相関の検証 学習前の全ての変数間の相関分布を検証した。例えば、共分散のデータとモンテカルロシミュレーションの比較である。それらが全て、誤差の範囲内で一致していることを確認した。また、支配的な背景事象のコントロール領域を設定し、MCの適切な補正を行なった。 本年度の研究によって、上記2つの課題をクリアすることができ、機械学習を解析に導入することに成功した。そのため、本年度の研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で、機械学習を取り入れた解析を導入できた。今後は、背景事象の見積もりや系統誤差の研究を進めていく。これらをまとめた最新結果を論文にする方策がある。 また、さらなる発見感度改善のため、グルーオンとクォークの素性の違いを利用する。グルーオンはクォークに比べて量子色力学の大きいカラー荷をもつため、ハドロン化の過程でより多くのハドロンを生成する。そのため、クォークに比べてジェットに付随する飛跡数は多く、ジェットの広がりも大きくなる。1本のジェットでこの特徴の違いを抽出することは、困難である。そのため、4本全てのジェットの飛跡数の総和を用いる。これにより、信号事象と背景事象で有意に差異が見られるはずである。今後の研究で、この違いも考慮して学習させ、より良い発見感度を目指す。
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Research Products
(3 results)