2018 Fiscal Year Annual Research Report
比較ゲノムとHi-Cデータに基づくシス因子を介した転写調節とその破綻機構の解明
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18J11775
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久保田 直人 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 乾癬 / GWAS / バイオインフォマティクス / ゲノミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの疾患の多くは遺伝要因と環境要因が複雑に絡み合い発症に至る。遺伝要因については、がんサンプルの全エクソーム解析に代表されるように、遺伝子座における変異が関与する疾患発症メカニズムが多くの注目を集めてきた。しかしながら、疾患原因遺伝子の同定率向上が望まれているにもかかわらず、遺伝子をコードしない領域(=non-coding領域)に存在するエンハンサー等の発現制御配列の変異については、ターゲット遺伝子の推定が技術的に困難であるなどの理由から研究があまりなされてこなかった。申請者はこれまでに、個別の症例報告に基づき疾患発症に関与するnon-coding領域を抽出しその機能解析をおこなってきたが、比較解析に適したデータの量が少なく抽出できる候補領域は限定的であった。そこで本年度は、多くのGenome wide association study(GWAS)によって報告されている疾患関連一塩基多型(SNPs)に着目し、候補変異を網羅的に抽出するプログラムを構築することで、non-coding SNPsが関与する疾患発症メカニズムを新たに発見することを目的とした。 ENCODEやFANTOM5など様々な国際プロジェクトから供託されているエピゲノムデータの統合・再解析を通して、慢性皮膚角化疾患である乾癬との関連が報告されているSNPsがEGF signalingに関与するERRFI1遺伝子の遠位エンハンサー領域に存在することを発見した。更に、原因SNPは転写因子の結合レベルおよびクロマチンの構造を変化させ転写活性を減少させる可能性を初めて示した。このように、non-coding SNPsの詳細な機能解析を介して新規ターゲット遺伝子および分子メカニズムを同定することができれば、治療標的分子の候補となり創薬への展開が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定していた解析については、ほぼすべて完了している。 また、研究成果はすでに国内学会で発表を行い、現在は論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は解析対象を乾癬としたが、今後は他の疾患についても解析が可能なパイプラインを構築する。また、バルセロナスーパーコンピューティングセンターとの共同研究を通して、新たに疾患感受性領域の同定を行い、同定したvariantに対して構築した解析パイプラインを適用し、未知の疾患発症メカニズムの新規発見を試みる。
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