2018 Fiscal Year Annual Research Report
ワイドギャップSn2+酸化物のp型化とキャリア濃度制御技術の確立
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18J11854
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
三溝 朱音 東京理科大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | p型酸化物半導体 / ワイドギャップ / 構造欠陥 / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、p型伝導性の付与に成功した3種類のSn2+酸化物(Sn2M2O7(M=Nb,Ta)とSnNb2O6)における、正孔濃度制御技術の確立である。これまでに、これらのp型Sn2+酸化物の正孔の起源がNb(またはTa)サイトのSn4+置換欠陥(SnNb’,SnTa’)であることを明らかとしてきた。当該年度は、さらに詳細に正孔生成機構を検討するため、電荷補償の要因となる酸素欠陥(VO・・)量の評価を主な目的として、以下に示す課題に取り組んだ。 1.リートベルト解析によるSnNb2O6の酸素欠陥量の評価 2.X線吸収分光(XANES)と広域X線吸収微細構造解析(EXAFS)によるSn2Nb2O7(Sn2Ta2O7)の酸素欠陥量の評価 3.Sn2Nb2O7における焼成時の酸素分圧とSnNb’生成量の関係の調査 その結果、電気物性の異なる(p型/n型)では酸素欠陥量が異なることが明らかとなった。特にSnNb2O6では、n型で酸素欠陥量が多いことが明らかとなり、酸素の存在するサイト毎に欠陥生成量が異なる可能性が示された。また、焼成時の酸素分圧の低下に伴いSnNb’生成量も減少することが明らかとなった。これらのことから、Sn2+酸化物では正孔生成源であるSnM’と電荷補償の要因となるVO・・の生成量がどちらも周囲の酸化雰囲気によって敏感に変化することがわかった。したがって、Sn2+酸化物をp型半導体化するためには、焼成条件などの作製プロセスの制御により欠陥量を相対的に変化させることが重要であると考えられた。 当該年度はこれらの成果をまとめ、研究代表者を筆頭著者として投稿論文2本、国内学会3件、国際学会2件の発表を果たしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Sn2+酸化物は構造欠陥の種類が多く、単一の評価方法では欠陥量の精密な評価には至らず、正孔生成のメカニズムには未解明な点が多く残されていた。そこで当該年度は、高エネルギー加速器研究所にて放射光を用いた先端計測を行い、これまでは判別できなかった局所構造の違いを観察することに成功した。この結果と、これまでの結晶構造解析、組成分析、化学状態分析の結果とを合わせることで、より多角的で詳細な議論が出来るようになった。 当該年度は研究成果発表にも力を入れ、権威ある論文誌であるChem. Materへの投稿を果たした。また、国内学会3件、国際学会2件の発表を行い、ポスター賞も受賞した。さらに学生賞への応募も積極的に行い、新科学推進協会(JACI)の第12回Green and Sustanable Chmistry Student Travel Grant Awardの受賞者5人のうち1人に選出された。この受賞に伴い、次年度の6月に開催される国際学会へ派遣される事となった。 このように、当該年度は研究の進展および継続的な成果発表に加え、複数の受賞も果たしたことから、実りある1年であったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、放射光測定により得られたデータの解析を行い、酸素欠陥の生成メカニズムについて検討した結果をまとめ、論文として発表する予定である。さらに、これまでに得られた正孔生成に関する知見から、新たなp型Sn2+酸化物の開発に展開していくつもりである。具体的には、これまでにNb2O6(Ta2O6)八面体の中心であるNb(Ta)サイトへのSn4+置換欠陥が正孔生成源であることが明らかとなったので、これまでの Sn2M2O7(M=Nb,Ta), SnNb2O6と同様に部分構造として八面体を持つ酸化物に着目し、p型化を目指す。最終的には、p型化に成功したSn2+酸化物の構造欠陥に関する共通点と相違点をまとめることで、Sn2+酸化物における普遍的な正孔生成メカニズムの解明につなげていく計画である。
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Research Products
(9 results)