2018 Fiscal Year Annual Research Report
固液界面ナノバブル周辺の分子間力分布計測を基盤とする新たな界面工学への挑戦
Project/Area Number |
18J11880
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
手嶋 秀彰 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 固液界面 / ナノバブル / FM-AFM / 分子間力 / 濡れ性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、従来の計測手法よりはるかに高感度な周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)を用いて固液界面ナノバブル周辺を計測し、固液界面近傍の局所的なガス過飽和度がナノバブルの安定性に及ぼす影響の解明を目指す。また並行して表面性状が異なる基板上での計測を行い、濡れ性や表面粗さがナノバブルの生成に与える影響を調査する。 本年度は、FM-AFM液中計測のノイズ低減に成功し、その結果z・x方向へ探針を走査する2次元分子間力分布計測技術を確立することができた。この技術を用いて高配向性グラファイト-純水界面を計測したところ、固液界面に気相がある場合と無い場合で周辺の分子間力分布が大きく異なることがわかった。また表面形状計測によって、固液界面にはナノバブルよりはるかに薄く従来のAFM計測では検知できない気体分子層が吸着していることが判明した。これらの結果は固液界面近傍の気体分子の振る舞いを考察する上で重要な知見であり、局所的なガス過飽和度の推測につながるデータとなる。また薄い気体分子層は明らかにグラファイトの結晶構造に影響を受けた形状で析出しており、原子スケールでの表面構造が固液界面の気相生成に影響を与える可能性が考えられる。 濡れ性がナノバブルの生成に与える影響については、親水・撥水複合面の上で界面ナノバブルを生成させることで調査している。複合面の濡れ性の差の程度によって界面ナノバブルの生成領域が著しく変化することが昨年度までに判明していたが、本年度は更に考察を深め、撥水性表面が溶存気体分子を引き寄せる一方で親水性表面は隣り合う撥水性表面に気体分子を供給すると仮定することで現象を定性的に説明することができた。この結果は、基板表面の濡れ性の制御が界面ナノバブルの生成位置のコントロールにつながることを示唆する重要な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FM-AFM計測によって実際に固液界面近傍の分子間力分布を計測でき、また気相の有無で分布の様子が変わるとわかったことは大きな進展である。さらに単分子厚みの気相の存在も検出することができ、局所的なガス過飽和度の推算に必要なデータは着々と得られている。 ナノスケールよりさらに小さなスケールの表面粗さが界面での気体分子の析出に影響を与えるという結果は、表面粗さと界面ナノバブルの関係を考察する上で重要な知見となる。さらに、親水・撥水複合面が界面ナノバブルの生成位置に影響を与えるという結果は、本研究の目標の一つである界面ナノバブルの生成位置の制御技術の確立への大きな一歩となる。これらのことから、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は分子間力分布計測技術を2次元から3次元に発展させる一方で、現在の技術での分子間力分布データの取得も引き続き行い、その結果を基に界面ナノバブル周辺の水和構造や局所的なガス過飽和度を明らかにする。そうして得られた結果と従来のAFMでは検知できない単分子厚みの気相の存在を併せて固液界面ナノバブルの理論に落とし込むことで、新たな安定性理論の構築に取り組む予定である。 また、親水・撥水複合面に関する考察の妥当性を裏付けて定量的な議論に発展させるためにも、FM-AFMの分子間力分布計測技術を用いて複合面境界近傍での水分子・空気分子密度の計測を実施する予定である。 本研究員は本年度の5月から半年間の留学を予定している。したがって、期間中は上述した内容のうち計測実験については他の学生に担当してもらい、実験方針の決定及び研究結果の分析・考察を本研究員が務める。
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