2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J12023
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 資生 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 強い相互作用のCP問題 / 暗黒物質 / ニュートリノ質量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ゲージ対称性によりPQ対称性を保護する機構に基づく宇宙論の解明や、その機構の素粒子標準模型を超えるモデルへの応用である。特に本年度は、ゲージ対称性によりPeccei-Quinn (PQ)対称性を保護する機構を、素粒子標準模型を超えるモデルへ応用し、具体的な模型の構築とその現象論を主に研究して、その成果を論文として発表した。
論文では、素粒子標準模型を超えるモデルとして期待されているいわゆるシーソー模型に対して、ゲージ対称性によりPQ対称性を保護する機構を適用し、新しい模型を提案した。シーソー模型では、素粒子標準模型に右巻きニュートリノを新たに導入する。この右巻きのニュートリノにより、バリオン数とレプトン数の保存に関連するB-L対称性が、量子アノマリーフリーとなり、ゲージ化可能となる。今回提案した模型では、このB-Lゲージ対称性によって、PQ対称性を、重力による破れの効果から保護する。さらに、この模型では、Strong CP問題だけではなく、暗黒物質、物質反物質の非対称性、ニュートリノの質量といった素粒子標準模型における未解決問題をも同時に説明可能な模型となっている。具体的には、暗黒物質としてはアクシオンがその主な成分となり、物質反物質の非対称性はレプトジェネシスという機構によって解決されている。ニュートリノの質量については、シーソー模型によって、有限かつ不自然に小さい結合定数なしに与えられる。この模型の検証可能性としては、特に、アクシオンが暗黒物質の主な成分となる場合には、現在進行中もしくは将来のアクシオンに関する実験で検証することが可能である。また、この模型は、階層性問題を解決する超対称性模型への拡張も容易に可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ゲージ対称性によりPeccei-Quinn 対称性を保護する機構を大統一模型に応用し、論文として発表した。これは、当初の計画に沿った成果である。また、ゲージ対称性によりPQ対称性を保護する模型に基づく宇宙論については、先行文献の収集などを行い、シミュレーションを通した研究準備を順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として、B-Lゲージ対称性を含むような大統一理論へ模型を発展させることや、位相欠陥の形成・発展の宇宙論を明らかにすることを考えている。大統一理論への拡張については、いわゆるSO(10)模型への単純な拡張では、PQ対称性のquality問題が再発することが研究により明らかになった。しかしながら、この問題はリー群の特殊部分群などを応用することにより解決できる可能性があり、文献の調査を始めている。また、ゲージ対称性によりPQ対称性を保護する模型に基づく宇宙論についても、シミュレーションによる解析を行う予定である。
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