2018 Fiscal Year Annual Research Report
Planning method for arrangement and operation of urban energy supply facilities based on time series analysis at minute intervals
Project/Area Number |
18J12025
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上野 貴広 九州大学, 人間環境学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 分散型エネルギー供給設備 / 電力需要 / 熱需要 / コージェネレーションシステム / 地域冷暖房 / 太陽光発電システム / 蓄電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はエネルギー需給の時系列解析から、再生可能エネルギーを組み入れた都市の最適なエネルギー供給形態を明らかにすることである。この目的を達成するために、解析対象都市における全建物のエネルギー需要データを基に、都市への最適なエネルギー供給設備の配置・運用計画を導くことができるシミュレータの開発を進めている。 本シミュレータの開発作業は大きく分けて①都市の各建物のエネルギー需要推定手法の開発、②エネルギー供給設備のモデル化、③エネルギー供給設備の最適化手法の開発の3つである。平成30年度は、①については住宅、非住宅でそれぞれ異なる方法を用いて各建物の電力需要と、冷房、暖房、給湯の各熱需要を5分間隔で推定する手法を開発し、②については非住宅におけるエネルギー供給設備のモデル化に注力し、当初計画していた非住宅用供給設備のほとんどをモデル化させた。③については省エネルギー効果を最大にするように、ケース検討から各設備の容量などを最適化させる手法を一時的な簡易版として作成している。 現段階のシミュレータでも①電力・熱の両方を扱うこと、②都市規模で分間隔の需要と供給の計算を行うこと、③熱搬送の制限や必要な動力および損失を計算することといった3点から十分な学術的先進性を持つ。また本シミュレータを用いた計算結果から、我が国のエネルギー需要の相当部分を占める都市部において、再生可能エネルギーを含むいくつかのエネルギー供給設備の導入効果に関する有用な知見を得ている。今後は、将来の都市構造および人口変化の予測に基づいた実用的なエネルギー供給計画の立案を予定しており、これによって再生可能エネルギーを最大限活用した都市の将来像を示すことができると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は以下の3つの作業によってシミュレータの開発を進めた。 ①都市の各建物のエネルギー需要推定手法の開発:住宅では対象都市の統計情報から各住宅の居住者数や家族構成を推定し、各住民に行動スケジュールを割り当て、行動の消費エネルギーから需要を積み上げることで推定する手法を開発した。非住宅では建物用途(事務、医療、商業、宿泊、飲食、教育)ごとに、年間の5分間隔標準需要データを作成し、これに外気温度や建物規模、営業時間などの影響を加味して5分間隔でばらつきを与えることで建物属性を考慮したエネルギー需要を作成する手法を開発した。 ②エネルギー供給設備のモデル化:非住宅向けに、太陽光発電パネル(以下、PV)、ガス給湯器および貯湯タンク(以下、給湯機器) 、コージェネレーションシステム(以下、CGS)、蓄電池をそれぞれプログラム上でモデル化させた。PVは政府公開データから対象都市の5分間隔日射量を作成し、日射量から発電量を計算するモデルを作成した。給湯機器は一般的な貯湯タンク、ガス給湯器を想定し、給湯需要をタンク内の温水で賄い、タンク残量に応じてガス給湯器を稼働させるモデルを作成した。CGSは建物ごとにエネルギーを供給するモデルと、1つの建物のCGSから複数の建物に供給する地域冷暖房としてのモデルを作成した。蓄電池はリチウムイオン電池を想定し、電力需要やPVなどの発電量を基に充放電を行うモデルを作成した。 ③エネルギー供給設備の最適化手法の開発:最終的には複数の最適化指標に基づき総合的に最適化させる手法を構築する予定だが、一時的なものとして、供給機器の容量や運転設定について作成した全ケースを対象都市の全建物で計算し、各建物で最も年間一次エネルギー消費量が小さくなるケースを求める総当たりアルゴリズムを構築した。 なお、①の作業成果の一部は日本建築学会環境系論文集に掲載されている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずエネルギー供給設備のモデル化を進め、蓄エネルギー設備である蓄熱槽と、燃料電池や太陽熱温水器といった住宅におけるエネルギー供給設備をモデル化させる。次に電力系統における発電所のモデル化を行う。対象都市に電力を供給する発電所の構成割合および各発電所の発電効率を基に、各月、各時刻における系統電力の平均発電効率を求めモデル化し、蓄電池や蓄熱槽と組み合わせることで、対象都市全体で電力の需給バランス調整を行うバーチャルパワープラント(VPP)の効果検討を可能にする。 次にエネルギー供給設備の配置・運用最適化について、最適化の指標となるものをリストアップする。計算対象都市における年間の一次エネルギー消費量やピーク電力需要の最小化、または都市全体でのエネルギー供給設備による売電量の最大化など、考えられる指標をまとめる。その後これらの指標に基づく供給設備の最適化アルゴリズムを構築する。上記の指標の1つ、あるいは複数を満たすように、計算対象都市における供給設備の配置や運転設定を求めるプログラムを開発する。現在のシミュレータでは各供給設備の入力パラメータをマトリクスで構築しており、これを最適化させる手法として遺伝的アルゴリズムの採用を考えている。 本研究の最終段階として、都市構造および人口変化の予測に基づき、将来も見据えた最適なエネルギー供給計画の立案を行う。2030年といった近い将来において、都心の高密度化と地方の過疎化が進んでいった場合に、それぞれの特性に基づいて建物立地や建物用途分布などがどれだけ変容するのかをシミュレータ上で再現し、これを用いて高密度地域に再生可能エネルギーを最大限取り込む方法や過疎・孤立地域のエネルギー供給を自立させる方法を明らかにする。
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