2018 Fiscal Year Annual Research Report
高密度ヘリコンプラズマ源を用いた先進的無電極プラズマ加速法の研究開発
Project/Area Number |
18J12036
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
古川 武留 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
|
Keywords | プラズマ推進 / プラズマ科学 / 宇宙理工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で提案する次世代型無電極プラズマ加速法の一つである回転磁場(Rotating Magnetic Field: RMF)プラズマ加速法の原理実証のため、実験的アプローチにより加速効果の検証、加速メカニズムの解明を行うものである。プラズマ内部にRMFを印加し、非線形効果に起因する周方向電流を駆動する。この電流と外部発散磁場の径方向成分に起因する軸方向ローレンツ力によりプラズマを加速する。本加速スキームでは従来電気推進機にみられる電極損耗がなく、これによる推進効性能の低減、推進機寿命の制限等の問題が無いため、長期的深宇宙探査といった将来型宇宙開発での利用が期待されている。 採用第1年目では、RMFアンテナ領域におけるRMFの時間変動成分の時空間分布計測を行った。これにより、RMFのプラズマ中への浸透評価を実験的に行った。さらに、プラズマの非線形効果(ホール効果)に起因する印加電流周波数の2倍高調波成分を周波数解析により導出した。この2倍高調波成分磁場分布から、RMFアンテナ領域における時間変動周方向電流密度分布を算出した。さらに、RMFアンテナ内部の周方向電流及び軸方向ローレンツ力を評価し、RMF由来の電磁加速効果を確認した。 本研究では2組の対向コイルを用いて回転磁場を発生させるが、この対向コイル間の印加電流位相差を変化させることで、RMFの回転方向および振動方向を変化させることができる。RMF由来の周方向電流駆動実証のアプローチとして、RMFの回転方向を変化させた際の、周方向電流の駆動方向や強度依存を評価した。結果として、正の電磁加速力を発生させる位相差で、最大の周方向電流及び正の推力が得られ、RMF印加におけるプラズマ流れの制御及びRMF加速法による推力制御可能性も示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で提案するRMF法は、現在そのプラズマ電磁追加速効果の原理実証段階にある。これまで申請者は実験的アプローチによりこの原理実証研究を進めており、特に各種RMF制御パラメータサーベイによるRMFのプラズマ中への浸透向上条件を解析的に明らかにした。これにより得られたRMF追加速制御指針を基に、採用第1年目ではこのRMF法により期待される周方向電流印加を、時間変動磁場の時空間分布計測により確認した。これにより本加速法のねらいである電磁加速力を導出した。しかしながら、得られた電磁力は、理論上このRMF法で期待される電磁力と比較して10%以下と非常に低い値となった。この原因の一つとして、理論では一様外部磁場形状を想定した周方向電流駆動である一方、スラスタスキームで必要な発散磁場形状(磁気ノズル)下でのRMF印加のため、軸方向プラズマ流のトランジットを含み、周方向電流駆動現象をより複雑なものにしていることが考えられる。先行研究において、RMF生成用電流値増大によるイオン流速、電子密度の非線形な増加を確認している。これを踏まえた更なるRMFによる周方向電流値増大のため、現在RMF印加電流値増大によるプラズマパラメータ変化を検証している段階である。 空間的なイオン流把握は、RMF印加による加速メカニズム解明に貢献するのに加え、プラズマ流制御指標の導出にも関わる。RMF追加速スキームにおけるレーザー誘起蛍光(Laser Induced Fluorescence: LIF)法による絶対値イオン流計測環境を整備し、現在計測を進める段階にある。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究で提案するRMFプラズマ追加速法による性能向上の一つのアプローチとして、RMFアンテナ印加電流値増大による推進性能向上の可能性が、先行研究で示唆されている。先行研究において、このRMF電流値増大による非線形なイオン流速と電子密度の増大が、RMFアンテナ下流領域で確認されている。昨年度下旬からこのRMF印加電流増大に関する研究を進めており、今後これに関する調査を継続し、更なる加速効果および推力への寄与を評価していくことは必要と考える。 昨年度実験的に導出した周方向電流値は、理論上駆動されうる電流値と比べ非常に低い値となり、この原因として、外部発散磁場形状下における3次元的なプラズマ流構造が、周方向電流駆動効率に影響していることが考えられる。今後はLIF法による3次元的なプラズマ流、および磁空間磁場構造の解明を進め、プラズマ流を考慮した電磁加速効果の評価が望まれる。 外部発散磁場形状を考慮したRMFアンテナ形状の最適化(追加速領域の拡張、RMFのプラズマ中への浸透にも影響)による電磁加速効果向上も期待される。プラズマの軸方向トランジットを考慮したRMFアンテナ長さおよび面積の加速効果への依存性を明らかにし、最適なRMFアンテナ条件を導出する。
|
Research Products
(12 results)