2018 Fiscal Year Annual Research Report
次世代シーケンサーを用いた粘液線維肉腫の網羅的解析と新規治療標的の探索
Project/Area Number |
18J12043
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹内 康英 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 粘液線維肉腫 / 遺伝子変異解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は粘液線維肉腫の遺伝子変異の詳細と、予後不良因子である低分化な成分が生じてくる遺伝学的機序や治療標的となりうる遺伝子異常を解明することを目的としている。 遺伝子変異の詳細:全61症例の原発性MFSに対し、全エクソンシーケンスデータを用いて遺伝子変異の解析を行った。同時にシーケンスデータを用いて腫瘍内染色体のコピー数異常の解析も実施した。61症例で合計4,613個の遺伝子変異が検出され、中央値は44個であった。最も多くの症例で遺伝子変異を認めた遺伝子はTP53で、ATRX、RB1がそれに続いた。コピー数異常、ないしは免疫染色でのp53強陽性を含めた場合、合計56症例でTP53に関する異常が検出された。 低分化な成分が生じてくる機序の解明について:5症例に対し、同一腫瘍内の別部位から採取したサンプルに対して全エクソンシーケンスを実施し、腫瘍内多様性の検討を実施した。サンプル間で共有される遺伝子変異は29%未満であり、MFSにおける非常に高い腫瘍内多様性が確認された。6症例に対し、原発腫瘍、再発腫瘍からサンプリングし全エクソンシーケンスを実施、遺伝子変異の経時的変化を検討した。いずれの症例においても再発病変における遺伝子変異の増加を認めており、経時的に遺伝子異常が蓄積している様子が観察された。いずれの検討においても、形態学的特徴と遺伝子変異の相関の検討を実施したが、予後不良因子である低分化な成分に特徴的にみられる遺伝子異常に関しては現時点では発見されていない。 治療標的となりうる遺伝子異常に関して:上述の通り、現時点でMFSにおいて検出されている遺伝子異常はTP53の点突然変異やコピー数異常などの分子標的治療薬の対象となりがたいものであり、MFSの治療成績を劇的に向上させる遺伝子異常に関しては検出されていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全エクソンシーケンスに関しては予定通りのサンプルが処理できた。しかしながら、主としてホルマリン固定後パラフィン包埋組織に対して全エクソンシーケンスを実施した際、ホルマリン固定によるDNAの断片化・変性のためDNAの質が低下しており、変異解析に時間を要した。検出した変異に対する裏付けは実施中であり、最終的に報告する遺伝子変異の数には多少の増減が見込まれる。 当初、遺伝子コピー数解析の研究手法としてSNPアレイの実施を考慮していたが、試薬の都合やホルマリン子固定後組織での技術的な困難存在したため、全エクソンシーケンスデータを用いた解析に切り替えた。解析は全てのサンプルに置いて実施できたが、DNAの質の低下により解析に時間を要した。 RNAシーケンスに関しては一部のサンプルにおいて実験・解析が完了しているが、共同研究期間におけるサンプルの採取・保存状況の影響で当初予定していたよりも解析可能なサンプルが減少した。FFPE由来のRNAの使用に関して各種条件検討を試みたが、DNAと同様質の低下が生じていることなどから実施を断念する必要があった。 当初予定していたDNAメチル化アレイを用いた解析に関しては、上述のDNAの質の低下による影響が大きいことが見込まれたため、凍結組織由来DNAに絞って解析を実施した。現在、データベースに登録されている腫瘍由来のメチル化アレイデータと比較検討し解析を実施している。 既存組織の形態学的評価に関しては実施が完了している。変異の数などに関する解析は終了しているが、予後不良因子である低分化な成分に特徴的にみられる遺伝子異常に関しては現時点では発見できておらず、さらなる詳細の検討が必要な状況となっている。当初はこれらのデータを発見し、それに基づいて培養細胞などを用いた実験・解析を実施する予定をしていたが、これらの発見の遅れに伴いそうした実験の開始が遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
解析対象としているサンプル数に関しては、遺伝子変異の詳細解明には十分な数が集まっているものの、低分化な成分を含む腫瘍サンプルに関してはいまだ十分な数の解析を実施できていない。引き続きサンプルの収集につとめ、不足しているデータを補完できる様に努める。 遺伝子変異の詳細解明に関しては、引き続きサンガーシーケンスなどを用いて検出した変異の裏付けを実施する。後述の解析を進める中で、特定の遺伝子に標的を絞ったターゲットシーケンスを実施する必要が生じた場合は、適切な遺伝子に標的を絞ったプローベ(ベイト)を作成し、腫瘍組織内に存在する遺伝子変異の高感度な検出を試みる。染色体コピー数異常の解析に関してもデータの解析を続行し、異常検出に用いたパラメータを微調整することで、確証の得られるデータの取得を試みる。RNAシーケンスによる融合遺伝子検索ができなかった症例に関しては、全ゲノムシーケンスを実施し、DNAに生じた構造異常やコピー数異常、遺伝子変異シグニチャ解析などを網羅的に実施し、各種データの補完に努める。 低分化な成分が生じてくる機序に関しては、現在取得済みの腫瘍組織から得られたデータに対してより詳細なデータの検証を試み、場合によっては上述のターゲットシーケンスを実施して解析を進めてゆく。DNAメチル化アレイによって得られたデータに関しても各種標準化を実施しデータベース上にあるデータとの適切な結合ができる様前処理を実施し、解析を進めていく。 上述の解析を早期に収束させ、治療標的となりうる遺伝子異常を検出し、それに対して有効な治療薬などを検索し、培養細胞やマウスモデルを用いた検証に移行する。
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[Presentation] Comprehensive analysis of genetic alterations and intratumor heterogeneity in myxofibrosarcoma2018
Author(s)
Yasuhide Takeuchi, Annegret Kunitz, Hiromichi Suzuki, Kenichi Yoshida, Yuichi Shiraishi, Teppei Shimamura, Kenichi Chiba, Hiroko Tanaka, Nobuyuki Kakiuchi, Yusuke Shiozawa, Akira Yokoyama, Tetsuichi Yoshizato, Kosuke Aoki, Yoichi Fujii, Hideki Makishima, Hironori Haga, Satoru Miyano, Frederik Damm, Seishi Ogawa
Organizer
American Association for Cancer Research Annual Meeting 2018
Int'l Joint Research
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[Presentation] Myxofibrosarcoma is characterized by frequent abnormalities in TP53 and increased genetic instability2018
Author(s)
Yasuhide Takeuchi, Hiromichi Suzuki, Kenichi Yoshida, Yuichi Shiraishi, Tetsuichi Yoshizato,Yusuke Shiozawa, Kenichi Chiba, Hideki Makishima, Satoru Miyano, Hironori Haga, Frederik Damm, Seishi Ogawa
Organizer
第77回日本癌学会学術総会
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[Presentation] Myxofibrosarcoma is characterized by frequent abnormalities in TP53 and increased genetic instability2018
Author(s)
Yasuhide Takeuchi, Annegret Kunitz, Hiromichi Suzuki, Kenichi Yoshida, Yuichi Shiraishi, Teppei Shimamura, Kenichi Chiba, Hiroko Tanaka, Nobuyuki Kakiuchi, Yusuke Shiozawa, Akira Yokoyama, Tetsuichi Yoshizato, Kosuke Aoki, Yoichi Fujii, Hideki Makishima, Hironori Haga, Satoru Miyano, Frederik Damm, Seishi Ogawa
Organizer
American Association for Cancer Research Annual Meeting 2019
Int'l Joint Research