2018 Fiscal Year Annual Research Report
Dynamics of Carbon Monoxide in the Sea Surface Microlayer of Temperate Coastal Waters
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18J12093
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
菅井 洋太 創価大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 海面ミクロ層 / 大気-海洋間のガス交換 / 一酸化炭素(CO) / 光化学的CO生成 / 生物学的CO消費 / 温帯沿岸域 / 地球温暖化 / フィードバック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、一酸化炭素(CO)の大気-海洋間の交換における海面ミクロ層の役割および海面水温の上昇によるCO生成・消費速度の変化とその地球温暖化に対するフィードバック機構を明らかにすることを目的とし、温帯沿岸域の海面ミクロ層におけるCO生成・消費速度の現場調査(①)、地球温暖化を想定した水温上昇実験(②)を実施するものである。 研究1年目にあたる2018年度は、①については、相模湾沿岸において1年間(毎月)調査を実施した。その結果、海面ミクロ層におけるCO消費は年間を通して大気-海洋間のCO交換を考慮する上で無視できるが、海面ミクロ層におけるCO生成は夏季にCOの海洋-大気フラックスを高めることが示唆された。また、海面ミクロ層における植物プランクトン由来の有機物の集積により、大気-海洋間のガス交換が抑制されることが示唆された。しかし、本年度は、海面ミクロ層においてCOを消費する細菌の現存量・群集構造の測定・解析を実施できなかった。 ②については、各季節に1度、海面ミクロ層の海水を現場水温と現場水温+3度の2条件で培養した。その結果、水温の上昇による海面ミクロ層におけるCO生成・消費速度の変化は秋から春にかけて地球温暖化に負のフィードバックとなるが、そのフィードバックは無視できることが示唆された。 ①の研究成果の一部は日本地球惑星科学連合2018年大会(JpGU 2018)で発表され、「学生優秀発表賞」を受賞した。また、①の研究成果をまとめ、論文を執筆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、温帯沿岸域の海面ミクロ層における一酸化炭素(CO)生成・消費速度の現場調査(①)、地球温暖化を想定した水温上昇実験(②)を実施し、期待通りの成果が得られた。 ①については、相模湾沿岸において、1年間(毎月)調査を実施した。海面ミクロ層において、CO生成・消費速度は春季から秋季に比較的高い値を示した。海面ミクロ層におけるCOの生成・消費および大気への放出を比較したところ、CO消費は年間を通して大気-海洋間のCO交換を考慮する上で無視できるが、CO生成は夏季にCOの海洋-大気フラックスを高めることが示唆された。また、海面ミクロ層では植物プランクトンブルーム時に溶存CO濃度が大きく増加し、海面ミクロ層における植物プランクトン由来の有機物の集積によって大気-海洋間のガス交換が抑制されることが示唆された。 ②については、各季節に1度、海面ミクロ層の海水を現場水温と現場水温+3度の2条件で培養し、水温の上昇によるCO生成・消費速度の変化を評価した。CO生成速度は全ての季節で水温の上昇による変化が見られなかったが、CO消費速度は秋から春にかけて水温の上昇により増加した。CO消費速度の増加はCOの海洋-大気フラックスの減少に繋がるため、水温の上昇による海面ミクロ層におけるCO生成・消費速度の変化は秋から春にかけて地球温暖化に負のフィードバックとなることが示唆された。しかし、現場水温+3度で培養した条件で海面ミクロ層におけるCOの消費および大気への放出を比較したところ、そのフィードバックは無視できる程度であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目にあたる2019年度は、温帯沿岸域の海面ミクロ層における一酸化炭素(CO)生成・消費速度の現場調査(①)について、海面ミクロ層においてCOを消費する細菌(CO酸化菌)の現存量・群集構造の測定・解析を実施する。これまでに採取したDNA・RNAサンプルを用いてリアルタイムPCRおよび逆転写リアルタイムPCRを行い、海面ミクロ層と海面直下におけるCOの消費に関わる機能遺伝子の現存量・発現量を測定する。測定した現存量・発現量と物理的・化学的環境要因およびCO消費速度(これらは既に測定済み)との関係を解析し、COの消費に関わる機能遺伝子の発現メカニズムの解明およびCOの消費に関わる機能遺伝子の発現量からのCO消費速度の推定を試みる。また、海面ミクロ層と海面直下におけるCO酸化菌の群集構造・多様性を解析する。 また、本研究で得られた成果をまとめ、国内学会・国際学会で発表を行う。海面ミクロ層におけるCO生成・消費速度、COの消費に関わる機能遺伝子の現存量・発現量およびCO酸化菌の群集構造・多様性という内容にわけ、国際学術雑誌に投稿する。
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