2018 Fiscal Year Annual Research Report
分散効果を伴う粘性保存則に対する初期値問題の時間大域解の第2漸近形の構成
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18J12340
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
福田 一貴 北海道大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 粘性保存則方程式 / 分散効果 / 漸近挙動 / 解の漸近形 / 第2漸近形 / 漸近レート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 分散項を持つ粘性保存則方程式に対する初期値問題の時間大域解の漸近挙動に関する考察を行った. 特に本研究では小さい初期値に対する問題を考え, 初期値が空間遠方で次数α(>1)のオーダーで0に減衰する場合を取り扱った. この問題については, 非線形散逸波と呼ばれるBurgers方程式の自己相似解が解の漸近形となることが知られている. これまでの報告者の研究では, α>2の場合の研究を行い, 解の第2漸近形を構成することで, 非線形散逸波への最適な漸近レートが導出されていた. 本年度の報告者の研究においては, 先行研究では扱われていなかった, 初期値が緩やかに0に減衰する, 1<α≦2の場合の研究を行った. この場合, α>2の場合に比べて初期値の効果が強く, 非線形散逸波への漸近レートが初期値の減衰率に大きく依存することがわかった. また, 摂動方程式の線形化方程式を詳細に解析することで, α>2の場合とは異った初期値の減衰率に対応した解の第2漸近形を構成することにも成功した. 更にこれによって, 与えられた漸近レートが最良となるための条件を明らかにすることができた. 本研究結果は国際雑誌に投稿済で, 現在査読中である. 研究期間の後半では, 上記の粘性保存則方程式に関連する双曲型の偏微分方程式に対する初期値問題を取り扱った. 具体的には, 緩和的双曲型保存則方程式系の一種であるJin-Xinモデルから導かれる, 移流項を伴う消散型波動方程式の解の漸近挙動に関する研究を行い, 上記の粘性保存則方程式に対応する結果を得ることにも成功した. 当該結果は現在論文を準備中であり, 今年度初めには国際雑誌に投稿する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はまず当初の研究計画書に記載の通り, 空間遠方で緩やかに減衰する初期値を持つ分散項付き粘性保存則方程式の解の漸近挙動に関する研究を行い, 予定の通りに, 解の漸近形とその漸近レートの導出及び解の第2漸近形の構成を行い, 新規性のある結果が幾つか得られた. また, これに関連する移流項付き消散型波動方程式の解の漸近挙動に関する研究も行い, 粘性保存則方程式の問題に対応する結果を得ることにも成功した. これらの結果については, 上記の通り前半の内容は既に論文を投稿済みであり, 後半の内容についても現在論文を準備中で, 近日中に投稿できる目処が立っている. このことから判断して, 本研究は非常に有意義な研究になったと言えるが, 当初の研究計画とは若干異なる方向に進行しており, 予定にはなかった消散型波動方程式に関する研究を行なった. このため, 本来の目的の一つであった, 空間遠方で異なる値に収束するような初期値を持つ粘性保存則方程式の解の第2漸近形に関する研究は未解決となっている. 従って, 上記の評価が適切であると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では, 当初の研究計画書に記載の粘性保存則方程式に関する問題に戻り, 初期値が空間遠方で異なる値に収束する場合, 特に進行波が発生する場合の解の第2漸近形の構成に関する考察を行う予定である. このような場合は具体的に, 進行波解と呼ばれる関数が解の漸近形となり, 元の方程式の解を進行波解とその摂動とみなしたとき, 初期摂動の減衰率に応じた進行波への漸近レートが得られている. 特に, 初期摂動が多項式オーダーで減衰していれば多項式オーダーで, 指数関数オーダーで減衰していれば指数関数的オーダーで進行波解に漸近することが知られている. 本研究では, 解の第2漸近形を構成することで, 進行波解への漸近レートの最良性を考察する. 研究遂行のためには, 本年度に実施した, 初期値が空間遠方両側で0に減衰する場合における, 初期値の減衰率に着目した研究でのアイデアが有効であると考えられる. これまで考えられてきた摂動方程式を再考し, 対応する適切な線形化方程式を導き, その解の主要部をこれまでの第2漸近形の導出法を適用して導く. 得られた解の評価については, 必要に応じて重み付きエネルギー法を適用することなども考えられる. また, これらの研究のヒントを得るために, 国内外の研究集会に参加し知見を広げ, 更に過去の結果に関する書籍・論文を通読するなど, 研究と並行した継続的な学習も行う.
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