2018 Fiscal Year Annual Research Report
自己の高齢者化意識がエイジズムに与える効果 -自己の将来としての高齢者像ー
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18J12472
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
竹内 真純 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | エイジズム / 老いに対する態度 / 高齢者 / サクセスフル・エイジング |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度には、第1に、2017年度までに行った3つの実験(実験1~3)を整理し、エイジズムの説明モデルを構築した。これらの実験は大学生を対象に、様々な状況で、自分が高齢者になると意識することがエイジズムに与える効果を検討したものであった。モデル構築に際し、状況を操作しない状態での効果、及び、幅広い年齢層での効果を検討する必要が生じたため、大学生・社会人を対象とした新たな実験を行った(実験4,5)。実験4の結果は2018年8月日本社会心理学会にて発表した。第2に、受入教員である片桐恵子教授らが実施したサービス付き高齢者住宅の住民に対するインタビュー調査に参加し、報告書の一部を執筆した。第3に、2017年度までに実施した中年を対象とした調査データを分析し、英文論文を執筆・投稿した。本研究は、社会的アイデンティティ理論に基づいて中年のエイジズムの規定要因を検討したものであり、前述のエイジズムの説明モデルを支持する結果であった。 2019年度には、第1に、当投稿論文に対する査読結果を受け、査読コメントへの対応として中年120名を対象とした追加実験(実験6)を行った。第2に、東京大学SSJDAに寄託されている「全国高齢者パネル調査」の二次分析を行い、加齢に伴うエイジズムの変化を明らかにした。この研究結果は2019年6月日本老年社会科学会にて発表した。第3に、中年および高齢者の年齢意識の実態を把握するため、口頭及び質問紙の自由記述を用いた質的調査を行った。具体的には、自分がどの年代(若者/中年/高齢者)だと思うか、その年代だと思う理由、その年代だと実感した経験等について尋ねた。データは3名のコーダーでコーディングを行い、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。第4に、レビュー論文を執筆・投稿し、エイジズムとサクセスフル・エイジングの関係を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、自分が高齢者になると意識することがエイジズムに与える影響を検討することを目的とし、以下の3つを目指すものである。①社会的アイデンティティ理論および存在脅威管理理論によってエイジズムを説明するモデルを構築する。②加齢に伴うエイジズムの変化を明らかにする。③エイジズムがサクセスフル・エイジングに与える影響を明らかにする。 このうち①については、2017年度までに実施した3つの実験結果を理論的に整理し、2018年度に2つ、2019年度に1つの追加実験を行ってモデルを構築した。追加実験は当初の予定外の研究であったが、構築したモデルを理論的に補強する結果が得られた。 ②については、2018年度には2017年度までに実施した中年を対象とした調査データの分析、2019年度には大規模縦断データの二次分析、および質的研究を行って、中年期から高齢期にかけての年齢意識とエイジズムの変化を明らかにした。2018年度に参加したサービス付き高齢者住宅の住人を対象としたインタビュー調査においても、高齢者自身の言葉によって老いに対する考えを聞くことができ、大きな収穫となった。 ③については、文献研究によって、これまでのエイジズム研究とサクセスフル・エイジング研究の関わりを明らかにし、レビュー論文を執筆・投稿した。 研究成果の公表については、2018年度に日本社会心理学会、日本循環器学会学術集会において、2019年度日本老年社会学会において、それぞれ発表を行った。学術論文については2018年度に英文雑誌へ掲載された。また、2018年度、2019年度にそれぞれ学術論文の執筆・投稿を行ったが、追加実験の必要性が生じるなどの理由により、いずれも未だ掲載には至っていない。 以上より、結果の公表にやや遅れがあるものの、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、現在までに構築したエイジズムの統合モデルについて、一般サンプルを対象とした社会調査を実施し、データによるモデルの実証を行う。具体的には、神戸市在住の40~69歳の男女1500人程度を対象に、ランダムサンプリングを用いた郵送調査を実施する予定である。調査項目については、エイジズム、加齢不安、年齢アイデンティティについてを中心に、2019年度に質的研究によって明らかになった当事者の年齢意識に関わる事項を基に調査項目を追加する。2020年度10月より準備を行い、調査対象者の選出、調査項目の選定と調査票の作成、倫理審査を行う予定である。11月後半から調査の実施、1月より分析を実施することを計画している。 第2に、現在までに二次分析によって明らかにした、エイジズムがサクセスフル・エイジングに与えるネガティブな影響について、英文論文を執筆・投稿する。
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