2018 Fiscal Year Annual Research Report
地層処分における岩盤の透水特性評価を可能とする連成数値解析モデルの開発
Project/Area Number |
18J12549
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
緒方 奨 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 高レベル放射性廃棄物地層処分 / 連成数値解析 / 岩盤内亀裂の透水特性 / 圧力溶解 / 亀裂発生・進展 / 損傷(Damage)モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
高レベル放射性廃棄物地層処分時の廃棄体処分坑道掘削に伴う亀裂の発生・進展により、坑道周辺岩盤の透水性が顕著に変化することが知られている。さらに、坑道掘削時に形成された亀裂の内部で圧力溶解といった岩石鉱物の溶解・沈殿が継続的に発生し、岩盤の透水性が長期的に経時変化することが予想される。本研究では、上記のような高レベル放射性廃棄物の地層処分における廃棄体処分坑道掘削過程から掘削後の長期処分期間における一連の岩盤内亀裂の透水性変化プロセスを一貫して定量予測可能な連成数値シミュレータの開発とそのシミュレータを用いた長期予測解析による地層処分システムの健全性評価を試みる。 初年度は、岩盤内の亀裂(損傷)発生・進展とそれによる透水性変化に加え、形成された亀裂内での鉱物溶解・沈殿発生による経時的な長期透水性変化をともに記述可能な新たな損傷モデルを定式化し、それを組み込んだ連成数値シミュレータを構築した。さらに、そのシミュレータを用いて地層処分時の廃棄体周辺岩盤の長期透水性変化予測解析を実施した。 具体的には、定式化した損傷モデルで導入している亀裂発生・進展計算の妥当性を花崗岩一軸圧縮試験における亀裂発生・進展挙動の再現解析より確認した。亀裂発生・進展に伴う亀裂内での鉱物溶解・沈殿の発生とその影響の定式化において、発生した亀裂の分布・接触面積・発生モード等の情報を用いて定義される圧力溶解の発生速度式及び圧力溶解に伴う亀裂の開口幅変化速度式を独自に提案した。また、構築したシミュレータを用いた廃棄体周辺岩盤の長期透水性変化予測解析の結果より、廃棄体処分坑道掘削時に発生した亀裂により岩盤の透水性が顕著に増加するが、その後、亀裂内部での圧力溶解により亀裂の透水性が時間の経過とともに低下していき、最終的には損傷のない健岩部の値とほとんど等しい値まで低下するというシナリオが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、まず、岩盤内の亀裂の発生・進展とその亀裂内での透水性変化プロセスを記述可能な新たな損傷(Damage)モデルを提案した。このモデルは、従来の損傷理論をはじめとする既存の理論を土台とした理論的検討と岩石亀裂への長期透水試験より得られた観察結果を土台とした実験的検討に基づいている。力学実験装置の故障等もあり岩石供試体を用いた三軸圧縮試験を透水試験と併せて実施することが出来ず、当初の研究計画で予定していた実験体系とのずれが一部生じることになったが、損傷(Damage)モデルの提案については、おおむね当初の予定通り進展したといえる。続いて、提案した損傷(Damage)モデルを熱・水・応力・化学(T-H-M-C)連成に組み込んだ熱・水・応力・化学・損傷(T-H-M-C-D)連成解析モデルを汎用連成数値解析ソフトCOMSOL MULTIPHYSICSに実装することにより、T-H-M-C-D連成数値シミュレーションを行った。これも当初の予定通りである。上記のように、検討はおおむね順調に進展したが、 初年度での実施を予定していた連成シミュレータを用いた幌延深地層研究所での原位置試験の再現解析については、日本原子力開発機構からの試験データの提供時期が予定より遅れたこともあり、2年目での実施を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、高レベル放射性廃棄物地層処分時の廃棄体処分坑道掘削過程から掘削後の長期処分期間における岩盤内亀裂の透水性変化を評価する連成数値シミュレータを提案するとともに、それを用いて地層処分時に想定される複雑な実地盤環境を一部単純化した条件の下、長期予測解析を実施した。これに対し、2年目は、初年度に実施出来なかった幌延深地層研究所で実施された原位置試験結果の再現解析を行い、実地盤環境及び実地盤スケールでのシミュレータの妥当性を検証する。また、シミュレータの妥当性が確認された後、日本原子力開発機構より提供された実地盤環境条件を導入した長期予測解析を実施し、想定される実際の地層処分条件下での岩盤内亀裂の長期透水性変化を予測するとともに、地層処分システムの長期健全性を検討する。
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Research Products
(8 results)