2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18J12728
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
猪又 敬介 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 初期宇宙論 / 原始ブラックホール / 重力波 / 密度揺らぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、密度揺らぎが生み出す背景重力波の観点から研究を進めた。LIGOの重力波イベントやダークマターを説明するほどの量の原始ブラックホールを生成するような大きな振幅の密度揺らぎは、その二次摂動からLISAやDECIGOを始めとした将来観測で調べられる大きさの背景重力波を生み出す可能性がある。このような背景から、密度揺らぎ由来の背景重力波は現在大きな注目を浴びている。今回の研究では、現在および将来の背景重力波観測で調べられる密度揺らぎのスケールと振幅を明らかにした。結果として、幅広いスケールの密度揺らぎが将来の観測で調べられることが明らかになり、原始ブラックホールを密度揺らぎが生成する背景重力波の側面から議論するための基礎が整ったと言える。なお、この結果に関する論文は、Physical Review D誌に掲載された。
また、放射優勢期の前に存在する可能性が示唆されている初期物質優勢期が(密度揺らぎがつくる)背景重力波に与える影響に関する研究も行っている。物質優勢期では、密度揺らぎの発展が放射優勢期とは異なるために、初期物質優勢期の存在は生成される背景重力波のスペクトルに影響を及ぼす。これまでの先行研究では、大雑把な仮定のもとで解析を進めており、その結果として初期物質優勢期が存在する場合は、(存在しない場合に比べて)背景重力波は増大するという結論を得ていた。しかし、この研究で初期物質優勢期から放射優勢期への遷移中の揺らぎの発展を注意深く考慮したところ、生成される背景重力波が増大するか否かはその遷移の詳細に大きく依存することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原始ブラックホールに関する研究が盛んに行われている中、原始ブラックホールと背景重力波の関係性に焦点を当てた論文が次々と発表されたことを受けて、二年目に行う予定であった背景重力波に関する研究を優先的に行うことにした。結果として、将来の背景重力波観測で調べられるような密度揺らぎのスケールと振幅を明らかにできた。これは、原始ブラックホールを背景重力波の側面から調べる上で大きな意義を持つ。したがって、本研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在行なっている、初期物質優勢期が密度揺らぎ由来の背景重力波に対して与える影響に関する研究を引き続き進める予定である。その研究が完成した後に、初期物質優勢期に生成される原始ブラックホールがダークマターであるシナリオを密度揺らぎ由来の背景重力波の観点から調べたいと考えている。 また、LIGO-Virgoチームの third observing run (O3)でより多くのブラックホールが発見されることが期待されているため、質量およびスピン分布の側面から原始ブラックホールの観測的検証に向けた研究を進めていきたいと考えている。
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