2018 Fiscal Year Annual Research Report
Ultrafast Dynamics of Ionic Liquids: Understanding of Molecular Level Aspects of Transition from Intermolecular Vibration to Structural Relaxation
Project/Area Number |
18J12979
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
柿沼 翔平 千葉大学, 大学院融合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | イオン液体 / フェムト秒ラマン誘起カー効果分光 / 分子間振動 / 低振動数スペクトル / 温度依存性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではイオン液体の特殊性の起源・本質を分子レベルで明らかにするため、イオン液体およびそれと構造や物性が類似した系のフェムト秒ダイナミクスの温度依存性を二種類の相補的な分光法、フェムト秒ラマン誘起カー効果分光(fs-RIKES)とテラヘルツ時間領域分光(THz-TDS)により検討し、イオン液体の特性が超高速ダイナミクスに与える影響の解明を目指している。 今年度は、非芳香族系カチオンであるピロリジニウムカチオンと10種類の様々な構造を有するアニオンを組み合わせたイオン液体を合成もしくは購入し、その分子間振動ダイナミクスの温度依存性をfs-RIKESにより検討した。分子間振動ダイナミクスを反映する低振動数スペクトルの温度依存性はアニオン種によって異なり、アニオンの構造や分極率異方性の大きさの影響が現れることが示唆された。加えて、イオン液体の粘度の温度依存性とガラス転移温度を測定し、フラジリティと呼ばれるパラメータを算出したところ、低振動数スペクトルの一次モーメントの温度変化の大きさとの間に相関が見られることが明らかになった。 また、イオン液体のアニオンとして用いられるアミド系アニオンのリチウム塩を炭酸プロピレンやテトラグリムに高濃度溶解した電解質溶液の分子間振動ダイナミクスの温度依存性をfs-RIKESとTHz-TDSの両手法により測定し、イオン液体の場合と比較検討することを試みた。THz-TDS測定は神戸大学のグループとの共同研究により行った。fs-RIKESのスペクトルでは、電解質溶液の溶媒種の違いが大きな影響を与えたのに対し、THz-TDSのスペクトルでは、溶媒種の違いおよびイオン液体のカチオン種の違いはあまり大きな影響を与えないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ピロリジニウム系イオン液体の超高速ダイナミクスの温度依存性については、当初の計画通り、アニオン種の構造に基づく系統的な議論が行えるほどの多数のサンプルを検討し、これまでに得られていた芳香族系イオン液体における知見と併せることでイオン液体の超高速ダイナミクスの温度依存性に関する包括的な結論が得られた。本研究結果は国内・国際学会において発表し、論文として国際学会誌に報告した。イオン液体と高濃度電解質溶液については、二種の分光法での測定により分極率・双極子応答の相違点が明らかになってきたが、より詳細な検討のためにはさらに異なるリチウム塩・溶媒での測定が必要だと考えている。さらに、THz-TDS測定におけるサンプルのイオン液体および電解質溶液の信号が非常に小さいことが明らかになり、温度依存性を定量的に議論するためには測定精度の向上が必要であることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン液体の超高速ダイナミクスの温度依存性については系統的な知見が得られたため、今後はイオン液体と構造や物性が類似した系に焦点を合わせる。イオン液体と高濃度電解質溶液との比較については、新たなリチウム塩と溶媒の種類・組み合わせについて測定を行い、既に詳細な知見が得られているピロリジニウム系イオン液体と比較検討を行う。さらに、他のイオン液体に類似した系として、イオン液体を構成するカチオン・アニオンと等電子構造を有する中性分子の混合液体と超高速ダイナミクスの比較を行う。また、定常状態のラマン分光装置に温度可変の測定システムを組み立て、高濃度電解質溶液や中性分子混合液体を測定することで、超高速ダイナミクスのデータと併せてより広い時間・周波数領域での議論も行う。
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Research Products
(5 results)