2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J13038
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
LIU CHANG 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 高分子物性 / 複合材料 / 超分子構造 / 破壊力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
環動高分子基材における架橋点の運動性と大変形下での破壊挙動との相関を解明するために、まずはポリロタキサン(PR)を架橋剤として用いた環動エラストマーのX線散乱測定を行った。その結果、環動エラストマーを変形させると、内部のPR架橋剤の形態がランダムコイル状から延伸方向に細長い楕円状になることが明らかになった。さらに、異なるPRにある二つの環状分子同士を連結することで得られた環動ゲルに対しても変形下におけるX線構造解析を行った。環動ゲルにある環状分子数の減少に伴って、架橋点のスライドによってむきだされた軸高分子の長さが増加し、伸長誘起結晶化が起こることで、破壊靭性が著しく向上することが明らかとなった。ハイドロゲルにおいて伸長誘起結晶化が観測されたのは本研究が初めてである。 環動ゲル亀裂先端の局所応力・歪み分布を調べるために、偏光高速度カメラを用いてゲルの破壊過程を観察した。通常の化学ゲルでは、亀裂先端にある特異点以外の応力分布は線形破壊力学が適用できるのに対して、架橋点運動性を持つ環動ゲルでは、局所応力・歪みが均一に分布しているCohesive zoneが亀裂先端付近の広い範囲で観察された。 ナノセルロースやナノクレイなど異方性を持つナノ粒子を環動高分子材料に充填するための検討、ならびに予備実験を開始した。異方性ナノ粒子の配向しやすさを利用することで環動高分子基材における構造変化を促進し、破壊靭性の更なる大幅な向上が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、従来のコンポジット材料に比べて静的・動的破壊靭性が大幅に向上した環動複合材料を開発することを目指している。今年度、可動架橋点の運動性による環動高分子基材が大変形下でのミクロ構造変化を解明したこと、亀裂先端における局所応力・歪み測定手法を構築できたことなどから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、繊維状のナノセルロース、カーボンナノチューブや平面状のナノクレイ、酸化グラフェンなど、異方性ナノ粒子を環動ゲルと環動エラストマーに充填させることで、変形下でのナノ粒子配向挙動による亀裂進展の分岐、転向、更に抑止などを試みる。 さらに、環状分子とナノ粒子表面に導入官能基の種類や修飾率を変化することによって、ナノ粒子と環動高分子基材の間の相互作用を広い範囲で制御し、前述の手法で静的破壊・動的疲労過程をマルチスケールで明らかにする。これによって、ナノ粒子と環動高分子基材の間の相互作用を最適化し、環動高分子複合材料を創成する。
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