2018 Fiscal Year Annual Research Report
金属/担体間の化学結合とエピタキシーを利用した金属ナノフレーク担持触媒の創製
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18J13178
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中尾 琢哉 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | エレクトライド / アンモニア分解触媒 / 第一原理計算 / H+/H-共存 |
Outline of Annual Research Achievements |
アンモニア分解反応を目的とした金属単原子担持触媒の探索として、様々な物体に対する金属単原子の吸着エネルギーのスクリーニングを行ったところ、無機電子化物である[Ca24Al28O64]4+・4e-(以下、C12A7エレクトライド)表面において金属単原子の吸着エネルギーが他の物質と比べ高い値を示すことを見出した。そこで、金属単原子担持触媒の候補としてC12A7エレクトライドに着目することとした。C12A7エレクトライドに担持する金属単原子を探索するにあたって、まず、金属単原子担持していない場合の反応機構を明らかにし、反応の律速段階を明確にする必要がある。そこでC12A7エレクトライド表面でのアンモニア分解機構を第一原理計算を用いて調べた。様々な反応機構を検討したところ、H+(プロトン)とH-(ヒドリド)という異なる価数を持つ水素原子がC12A7エレクトライド表面で反応中に共存しうること、また、H+/H-共存に由来するC12A7エレクトライド表面ならではの特異的な反応機構を見出した。この反応機構により、律速段階はN2H4(ヒドラジン)の生成反応であると予測される。また、反応中にH-の被覆率によってはNH2ラジカルが生成するが、それによってN2H4生成の活性化エネルギーは大きく減少することを明らかにした。これらは従来用いられている遷移金属触媒とは異なる反応機構であり、既存の触媒の枠組みを広げる可能性がある。今後はC12A7エレクトライドにおけるアンモニア分解反応の活性化エネルギーを下げる単原子金属種を第一原理計算を用いて探索する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究を円滑に進め発展させるために、受入研究者の共同研究者であるPacific Northwest National LaboratoryのPeter V. Sushko教授のもとに平成30年5月から渡航している。初めての海外長期滞在ということもあり、すぐには研究成果を挙げられず今年度は論文投稿や学会発表をすることはできなかった。研究成果としては、C12A7エレクトライドを用いたアンモニア分解反応に着目し、その反応機構の全貌を明らかにした。現在は上記内容に関する論文を執筆中であり、近々に具体的な形に結びつきそうである。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、アンモニア分解を目的とした金属単原子担持触媒の担体候補としてC12A7エレクトライドに着目し、まず金属単原子担持していない場合の反応機構を明らかとした。本年度はC12A7エレクトライド表面におけるアンモニア分解反応の活性化エネルギーを下げる単原子金属種を第一原理計算を用いて探索する。金属種としては安価で地殻中の存在度の比較的大きい元素であるMn, Fe, Co, Ni, Cu, Moを対象とし、金属単原子およびエレクトライドならではの反応機構の発現を狙う。これら金属単原子を担持したC12A7エレクトライド表面におけるアンモニア分解反応の活性化エネルギーおよび反応機構を明らかにする予定である。また、可能であれば、得られた候補材料の触媒性能を実験から評価する。
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