2018 Fiscal Year Annual Research Report
電解反応によるアルキンのラジカルカチオンDiels-Alder反応の開発
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18J13181
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
尾崎 惇史 東京農工大学, 大学院生物システム応用科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | Diels-alder反応 / ラジカルカチオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「高価・有毒な試薬を用いずに、医薬品や天然物の基本構造となる複雑な炭素骨格をクリーンに構築する手法を確立すること」を目的としている。具体的には「電気化学に基づく電子豊富なアルキンと電子豊富な共役ジエンによるラジカルカチオンDiels-Alder 反応の確立と応用」である。電極との電子移動により、不活性な出発原料を一時的な極性転換を利用して活性化することで、炭素-炭素結合形成を目指している。これまでに報告されている電子的ミスマッチなアルキンと共役ジエンのDiels-Alder 反応において金属試薬が利用されているが、よりクリーンな通電という手法を用いた本反応の開発に挑戦した。 まず、4-エチニルアニソールと2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンをモデル基質として、反応条件の検討を行った。その結果、目的物の生成を少量だが確認することができた。サイクリックボルタンメトリーの測定結果から、両基質の酸化電位はどちらも同程度であることが分かった。アルキンや用いたジエンが酸化された場合、中間体は非常に不安定なものであることが考えられる。そのため、反応がうまく進行しなかったのではないかと考えた。そこで、酸化されても安定なジエンである9-メチルアントラセンを用いて検討行った。本ジエンは酸化電位が1.0 V(Ag/AgCl)ほどで、アルキンに比べて、酸化電位が低い。したがって、アルキンと9-メチルアントラセンを用いて電解反応を行った場合、ジエンが先に酸化される。 条件検討の結果から、溶媒はニトロメタンを用いる必要があることと支持塩は広く利用できることが明らかになった。さらに、アルキンの汎用性も検討した。その結果から三重結合の電子密度が高い基質ほど生成物を高収率で与えることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私は、所属研究室でこれまで研究を行ってきた電解ラジカルカチオンDiels-Alder反応において、新たにアルキンを利用した研究に取り組んだ。アルキンを用いた本反応はこれまで金属触媒を利用したものしか報告されておらず、電気化学的手法を用いることは新たなチャレンジとなっていた。そして、ジエンの酸化を起点とすることで、アルキンとジエンによる電解ラジカルカチオンDiels-Alder反応の可能性を見出した。モデル反応を設定し、条件検討を通して最適条件を見つけ、さらにアルキンの汎用性の検討も行った。これにより、これまで未開拓であった部分の知見を得ることができ、期待通り研究が進展した。これまでの成果については、国際的に高く評価されている学術雑誌に発表した。また、上記の研究成果については新たに学術雑誌への投稿を目標に、研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、芳香環と共役していないアルキンを用いることなどを含め、アルキンの汎用性の広さを検討する。さらにジエンの汎用性を検討したいと考えている。 さらに、ジエンとしてビフェニルを用いる検討も行っていきたい。ビフェニルをジエンとして用いることで、フェナントレン骨格の構築にチャレンジするつもりである。フェナントレン骨格は多くの天然物に含めれており、有用な骨格である。しかし、ビフェニルとアルキンから直接Diels-alder反応のような環化反応は報告例がない。用いる基質の電子の状態などを考えながら、この反応に挑戦したいと考えている。
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