2018 Fiscal Year Annual Research Report
薄膜弾性測定と微細共振器を用いた2次元吸着ヘリウムの相転移の解明
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18J13209
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
巻内 崇彦 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 低温物性 / ヘリウム / 水素 / ネオン / 超固体 / 超流動 / 局在 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は低温の固体基板に吸着した数原子層の分子(原子)薄膜がどのような機構で局在するか明らかにすることを目的としている。分子薄膜の局在は超流動の発現や量子相転移と関係する重要な現象だが、電気的に中性な分子の局在を観測することは困難であり、局在の機構に様々な可能性が残っていた。これまでに我々は新しい手法として、薄膜の弾性率を直接測定できるねじれ振り子を開発した。多孔質ガラス基板に吸着した数原子層のヘリウム、ネオンに対して実験を行い、低温に向かって弾性率が増大し散逸にピークが現れる緩和現象(弾性異常)を発見した。 平成30年度はヘリウム(4He、3He)およびネオン(20Ne)薄膜の解析が終了し、さらに水素分子(H2、HD、D2)薄膜の実験も行った。弾性異常は吸着分子がエネルギーギャップの開いたバンドを組むことで生じる。量子性が最も強いヘリウムでは、量子臨界点でギャップが消失し量子相転移する。量子性の弱いネオンでは量子相転移は起きず、低温の固体的状態と高温の流体的状態の古典的なクロスオーバーとして理解できた。古典性と量子性を併せ持つ水素分子では、弾性異常が複数現れるという予想外の結果を得た。複数の弾性異常は水素分子の古典的拡散、量子トンネリング、表面拡散の凍結によるものであると考えられる。 また、別に作製したねじれ振り子を用い、原子レベルで整ったグラファイト基板上の4He薄膜でも弾性異常を観測した。この結果は基板のランダムネスが分子の弾性に果たす役割を見直す上で重要である。 以上の結果は、弾性異常があらゆる吸着分子薄膜に普遍的な現象であることを強く示唆している。今後は吸着分子と基板の様々な組み合わせに対して熱容量などの結果と比較して相や局在機構を整理する必要がある。ねじれ振り子の実験で時間を要したため、平成30年度から着手する予定だったグラフェン共振器の作製は遅れている。
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Research Progress Status |
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Research Products
(10 results)