2018 Fiscal Year Annual Research Report
時空間からみた社会性昆虫の分業メカニズム:全個体トラッキングによるアリの行動解析
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18J13369
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤岡 春菜 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 社会性昆虫 / 社会行動 / 個体間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
長期間のアリの行動観察のため,自動トラッキングシステムの開発を行ってきた。沖縄産トゲオオハリアリ(Diacamma sp.)は、50-200程度の個体が地中で生活している。実験室内での個体の寿命は、1-2年程度であるため、本研究では、採集したトゲオオハリアリを研究室内で飼育し、エナメル塗料を用いたマーキングにより、おおよその羽化日のデータを取得した。さらに、数百匹いる巣内の全個体に二次元バーコードを貼りつけ、個体識別を行い、画像認識によって定量的に行動を解析する手法を取り入れた。カメラや照明などの条件検討を終え、データの取得を行っている。行動データの取得には、Bugtag(Robiotec Ltd.)というアプリケーションを用いている。撮影した動画をBugtagトラッキングソフトウェアで解析することで、全個体を識別した上で各個体の座標、向きの時系列データを自動取得する。さらに、得られた個体間の 距離と向きの情報から、触覚接触による相互作用を自動判別できる。つまり、トラッキングで取得できる情報は、位置情報(巣 内・巣外)、活動量、個体間相互作用頻度の3点である。本年度は、一部の個体の除去、卵や幼虫といった未成熟個体の除去という操作実験を行い、それらの操作前後で個体の行動や相互作用パターンの変化を調べている。アリの行動は日齢の影響を強く受けると考えられてきたが、日齢だけでは説明できない、個体差があることが明らかとなってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
バーコードを使った行動追跡を行うための、条件検討に時間がかかってしまった。使用するカメラの性能や照明など、試行錯誤を続けてきた。また,トゲオオハリアリは力が強く、貼りつけたバーコードを、噛んで壊してしまったり、剥がしてしまうことがあるとわかり,バーコードの材質や接着方法についても工夫が必要であった。耐水性のある紙に、マット加工を行い、この問題を解決した。今年度ですべての条件検討を終え、長期間・精緻な行動追跡を開始できたため、来年度は問題なく進めていける。
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Strategy for Future Research Activity |
一部の個体の除去や未成熟個体の除去実験のデータを解析することで、日齢と行動パターンを紐づけていく。社会性昆虫では、個体間相互作用によって行動が変化しうると考えられている。そこで、日齢だけでは説明できない個体差を説明するために、相互作用の解析に重点を置き、研究を進めていく。また、巣内の空間構造の有無によって行動が変化するか、調べるための実験系の構築を行い、時空間データからの分業システムの解明をめざす。
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Research Products
(7 results)