2018 Fiscal Year Annual Research Report
Complete reconstruction of the microbiome information using single molecule DNA sequencers
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18J13422
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 慶彦 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | ゲノムアセンブリ / メタゲノム / 細菌叢 / セントロメア / プラスミド / ファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、特別研究員採用前から研究し続けている前者のメタゲノムに関する論文をまとめ、現在は海外の論文誌に投稿中である。この論文では、これまで技術的な制約からほとんど見過ごされてきた、細菌叢中のプラスミドおよびファージの塩基配列を直接同時に多数再構成することに成功し、 それらの各国の細菌叢データにおける存在分布の比較など、生物学的に重要な解析を行っている。加えて、近年有用であることが示されたDNAメチル化によるプラスミドやファージの宿主細菌推定も行い、その結果が他の配列などに基づく手法とも良く一致することを示している。
さらに、今年度は脊椎動物のセントロメアに関するゲノムアセンブリ手法開発を活発に行った。現在はショウジョウバエのデータを扱っているが、将来的にほぼ全ての脊椎動物の生物種に対して適用できるように一般的な枠組みで開発しているため、完成すれば極めて大きな意義を持つはずである。それだけでなく、そこで用いられる中心的な手法は上述の通り一般の反復配列の問題にも関わる応用範囲の多いアルゴリズムであるため、細菌叢メタゲノムの株レベル解析も可能になると期待される。脊椎動物セントロメアアセンブリの論文は手法が完成次第論文を投稿する予定である。
また、細菌叢メタゲノムの研究において、アセンブリにおけるプラスミドおよびファージDNAの形状決定問題という、やや特殊だが生物学的に重要な意味を持つ問題も発見した。この問題もやはり根本的には反復配列が原因であり、それまでの手法では見逃されてきたことを明らかにしつつ、反復配列の性質に基づく理論的かつ厳格な手法を考案した。こちらも手法の精密化およびテストデータに対するベンチマークを取ってから論文を執筆および投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者が現在投稿中のヒト腸内細菌叢メタゲノム解析の論文では、究極的な目標である細菌叢の株レベルでの解析は未だ実現していないものの、近年注目度の高いモバイローム解析を主軸として、それまで技術的な制約からほとんど見過ごされていた細菌叢中のプラスミドおよびファージの塩基配列を単離培養することなく細菌叢から直接多数完全に再構成することに成功し、比較解析や宿主細菌推定などの生物学的に重要な解析を行えることを示した。さらに、その過程でプラスミドおよびファージDNAの形状決定問題という新しい問題も発見し、それまでの手法では見逃されてきたことを明らかにしつつ、原因となる反復配列の性質に基づく理論的かつ厳格な手法を考案している。
申請者が目的としているのは、繰り返し構造(反復配列)を持つような複雑なゲノムおよびゲノム領域の塩基配列を再構成(アセンブリ)する理論的枠組み、および具体的手法の開発である。ゲノムアセンブリを最も困難にするようなゲノム中の反復配列としては、細菌叢メタゲノムに含まれる近縁種の複数のゲノム配列をはじめとして、他にもセントロメアにおけるタンデムリピート配列やトランスポゾンも知られている。これらの問題はどれも共通した性質を持っており、したがって統一的な反復配列アセンブリの枠組み構築を目指す上では、いずれの問題も取り組む価値がある。
脊椎動物セントロメアのアセンブリはそのような観点から取り組んでおり、さらに、その手法は将来的にほぼ全ての脊椎動物の生物種に対して適用できるように一般的な枠組みで開発している。脊椎動物のセントロメア配列アセンブリは現在でも最も困難な問題の一つであるだけでなく、当然細菌叢メタゲノムの株レベルアセンブリにも少なからず応用できるはずなので、完成すれば極めて大きな意義を持つはずである。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに反復領域の一種である、ほとんど同じ数百塩基対のDNA配列ひたすら繰りが返し並んでいるような構造(タンデムリピート)を持つ脊椎動物のセントロメア領域の配列アセンブリを行うアルゴリズムの開発を一般的な枠組みの下で進めており、まずはこのアルゴリズムの完成を急ぐ予定である。そのために、本年度も共同研究先であるドイツMax Planck InstituteのGene Myers研究室を訪問、滞在して積極的に議論や論文の執筆および投稿作業を進める予定である。必要に応じて秋頃に国際学会にて発表も行う(ASHGを予定している)。その後、セントロメアと同じく反復領域が最重要の課題となっているヒト腸内細菌叢メタゲノムのアセンブリアルゴリズムおよびソフトウエアを、上述のアルゴリズムを応用することで開発する。そして、完成したソフトウエアを用いて実際にヒト腸内細菌叢メタゲノムのデータをアセンブリして、従来では不可能だった、それぞれの菌株の個別ゲノム配列を分離して精度良く再構成できることを確認する。可能であればこれまでに共同研究を行ってきた理化学研究所服部研究室、もしくは議論経験のあるEMBL HeidelbergのBork研究室と共同研究を行い、疾病患者を含む多数のサンプルについて、具体的な疾病について従来手法では観察できなかった株レベルでの高解像度データをもとに比較解析等を行う。このメタゲノムアセンブリの手法および解析結果も、必要に応じて国際会議にて発表し、論文としてまとめて投稿する予定である。
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