2018 Fiscal Year Annual Research Report
ポドサイトにおけるKAT5を介したエピゲノム制御機構とその生理的意義
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18J13428
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
菱川 彰人 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | ポドサイト / エピジェネティクス / DNA損傷 / 糖尿病性腎症 / CKD / KAT5 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は最近、ポドサイトにおける転写因子KLF4を介した遺伝子特異的なエピゲノム調節機構がCKDの病態に関与している可能性を報告したが詳細な分子機序は不明であった。今回、エピゲノム変化の形成プロセスにおけるDNA損傷修復応答の関与に着目し、KLF4-interacting proteinであるDNA修復因子KAT5の役割を検討した。 ポドサイト特異的KAT5ノックアウトマウスはFSGS様病像を呈し腎不全により6週齢前後で死亡した。糸球体におけるDNA二本鎖切断(DSB)マーカーγH2AXおよびDNAメチル化の亢進が認められ、ポドサイト形質遺伝子ネフリンの発現低下、更に単離ポドサイトのBGS解析によりネフリンプロモーター領域のDNAメチル化亢進を示し、ポドサイトのエピゲノム変化を伴った形質変化が示唆された。更にポドサイトのKAT5発現はマウス糖尿病性腎症モデルおよびヒト腎生検検体において低下していることを見出した。糖尿病性腎症モデルにおいては糸球体DSB部位増加およびDNAメチル化亢進、ネフリン発現低下を認め、Gene transfer法を用いてKAT5を遺伝子導入することによりこれらの変化は改善した。またヒト培養ポドサイトを用いた検討では、糖負荷でKAT5発現およびKAT5プロモーター活性が低下し、KAT5を過剰発現させると、ネフリン発現の改善、ネフリンプロモーター領域DNA メチル化低下、DNMT1, 3B結合低下および同領域におけるDSB部位減少を示した。 以上より、KAT5を介したDNA修復はポドサイトの形質維持に生理的に必須であり、更に糖尿病性腎症においてポドサイトのKAT5低下が病態に関与しており、KAT5を介したDNA修復がエピゲノム変化形成プロセスに関与し、新規治療標的になりうる可能性が示唆された(Hishikawa, et al. Cell Rep. 2019)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
遺伝子改変動物の作成や表現型解析とともに、併行して効率的にヒト培養ポドサイトを用いたin vitroの検討を進めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた基礎研究による知見の臨床応用を目指す。 ヒト尿検体を用い、尿中に脱落したポドサイトにおける形質マーカーの発現およびエピゲノム修飾因子の発現と臨床情報の相関を検討することにより、糖尿病性腎症の低侵襲かつ診断マーカーとして、KAT5をはじめとするエピゲノム修飾因子の発現が有用か否かを検討することを予定している。
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