2018 Fiscal Year Annual Research Report
ユビキチン様タンパク質修飾システムを介したオートファゴソーム膜伸展機構の解明
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18J13429
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平田 恵理 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | オートファジー / Atg4 / Atg8 / 隔離膜 / 出芽酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
オートファジーにおいて、隔離膜が伸展しオートファゴソームが形成される過程の分子機構はほとんどが未解明である。本研究では、オートファゴソーム形成過程においてリン脂質であるホスファチジルエタノールアミン(PE)と結合するAtg8と、PEと結合したAtg8(Atg8-PE)を切断(脱脂質化)するシステインプロテアーゼであるAtg4に着目した。Atg8-PEの生成はオートファゴソーム形成に必須である。一方で、Atg8-PEの脱脂質化は隔離膜伸展のステップに重要であるが、脱脂質化の分子機構や、なぜ脱脂質化が隔離膜伸展に必要なのかについては不明であった。そこで本研究ではまず、共同研究グループにより解かれた出芽酵母Atg4の結晶構造をもとに、脱脂質化の分子機構に迫った。 Atg4の構造をすでに報告されているヒトAtg4の構造と比較したところ、出芽酵母に特異的な領域が存在することがわかった。この領域を欠損させて表現型を解析したところ、この領域がAtg8-PEの脱脂質化とAtg4の隔離膜への局在に重要であることが明らかとなった。このことから、Atg4はまず隔離膜上に局在化した後に活性中心を使って脱脂質化を行っている可能性が新たに示唆された。 さらに、オートファゴソーム形成過程における脱脂質化の意義を検証した。その結果、Atg8-PEを可逆的に切断し、脂質化されていないAtg8を供給することが隔離膜伸展に重要であることが示唆された。つまり、Atg8は脂質化された後にオートファゴソーム形成の場に局在化し、その後脱脂質化によりAtg8が切り離され、再び脂質化されるために供給されることが、隔離膜伸展には重要であるという可能性が示唆された。本研究により、ユビキチン様タンパク質修飾システムを介した隔離膜伸展機構に対する新たなモデルが提唱された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者の研究目的は、Atg4の局在及び酵素活性の制御機構に注目することでAtg8のPE修飾を介した隔離膜伸展の分子メカニズムを理解することである。そのために、以下の三つの目標を設定した。(a)隔離膜伸展時におけるAtg8の修飾制御機構を明らかにすること。(b)atg4変異体の表現型を解析することでAtg4の機能を理解する。(c)Atg3及びAtg4をマーカーとして隔離膜を生化学的に同定・単離したのちその構成成分を分析し、見出された隔離膜構成成分に注目した解析を通じて隔離膜伸展のメカニズムを理解する。今年度の研究結果から、Atg4の構造情報を基にした第二反応特異的な変異体を新たに取得することができた。さらに、この変異体の表現型を解析することにより、脱脂質化の分子機構について新たな知見を得ることができた。このことから、(b)については順調に進展していると考えている。今年度の研究結果については、翌年度中に論文として発表する予定である。また、(a)については、現在Atg3とAtg4の局在を同時に観察できる株を作製しており、今後の解析で結果を得ることができると期待している。しかし、隔離膜が蓄積する条件については未だ検討中であり、隔離膜の同定・単離については翌年度も引き続き検証していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
Atg4によるAtg8-PEの脱脂質化の分子機構について、今年度の研究結果からAtg4の隔離膜局在に必要な領域を同定することができた。今後の方針としては、なぜこの領域が隔離膜局在に必要なのかを検証し、結果をまとめて論文として発表する。さらに、この領域が隔離膜上に局在するAtg8以外のタンパク質とも相互作用する可能性が考えられるため、Yeast two hybrid法及び免疫沈降法を用いてAtg4の複合体形成を確認する。複合体形成が確認されたら、in vivo, in vitroの実験を行うことにより、Atg4によるAtg8-PEの脱脂質化の制御機構を理解する。 また、Atg4による脱脂質化の制御機構を理解すると同時に、隔離膜の生化学的解析についても進めていく。申請者はすでに、Atg19を過剰発現させることにより隔離膜の出現頻度が上昇することを見出している。さらに、Atg14を高発現させた株ではオートファジー活性が上昇することが報告されている。これらの変異体においてさらにAtg8-PEの脱脂質化を阻害することにより、隔離膜の出現頻度およびサイズが向上した変異株を選抜する。得られた変異体を用いて、差分遠心法・密度勾配遠心法・免疫沈降法を使用して生化学的に隔離膜を分離する。隔離膜のマーカーとして、既知のAtg8および申請者が見出したAtg4、Atg3を使用する。分離した隔離膜からタンパク質およびリン脂質を抽出し、質量分析法により隔離膜を構成するタンパク質および脂質組成の解析を行う。同定された膜貫通タンパク質や脂質に注目した解析を行うことで、隔離膜の伸展機構や、膜が由来するオルガネラに関する知見が得られる。
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