2018 Fiscal Year Annual Research Report
植物病原性細菌が有する病原因子エフェクターの分子機能の解明
Project/Area Number |
18J13493
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
藤原 祥子 愛媛大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
|
Keywords | 病原因子エフェクター / チオレドキシン / GGCT活性 / グルタチオン |
Outline of Annual Research Achievements |
採用1年目は、RipAYのTrx-h5を介した活性化モデルを構築にむけて、各種RipAY変異体を作製し、RipAYとTrx-h5の結合に必要なアミノ酸配列の同定を行った。RipAYをN末端側及びC末端側から欠損させた各種欠損変異体を作製し、Yeast two hybrid (Y2H)法を用いて相互作用を評価したところ、RipAYの84-383アミノ酸領域が、Trxとの結合及び活性化に重要であることが示唆された。また、シロイヌナズナチオレドキシンTrx-h5の2つの活性中心について、一方のシステイン及び両方のシステインをセリンに変異させた変異体をそれぞれ作製し、RipAYとの相互作用を調べたところ、Trx-h5のシステイン残基はRipAYとの相互作用に関与するが、Trxの活性はRipAYの活性化に必要ではないことが明らかになった。 また、RipAY-Trx-h5複合体を大量精製し、RipAY単独及びTrx-RipAY複合体、それぞれのX線結晶構造解析を行い、RipAYの活性化機構を分子構造レベルで解明することを試みた。比較的安定な構造と予測されるTrx-h5-RipAY複合体(ホロ体)の結晶化を目指して、現在までに10種類のスクリーニングキットを用いて結晶化スクリーニングを行ったが、Trx-h5-RipAY複合体の結晶化には至らなかった。原因としてNi-キレートカラムによる精製度の低さが考えられたため、精製時のカラムやバッファーの種類を変更する等の条件検討を行ったが、有効な方法は確立されなかった。同様に、RipAY単独(アポ体)の結晶も得ることができなかった。 現在は、RipAYの機能的なホモログであると考えられるAcidovorax citrulli由来のAave_4606を用いることで、RipAYを含めたTrx依存性GGCTの活性化機構について解析を試みている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで、RipAYの宿主Trx依存的なGGCTの活性化メカニズムを解析するため、各種RipAY欠損変異体を用いたY2HによるTrxとの相互作用解析や、活性化の測定から、Trxとの結合及び活性化に重要な領域が判明した。また、Trx-h5の活性中心をシステインからセリンに変異させた変異体を作製し、RipAYとの相互作用およびRipAYの活性化を調べたところ、Trx-h5のシステイン残基はRipAYとの相互作用に関与すること、RipAYの活性にTrx-h5の活性は必要ではなく、Trx-h5の2つのシステイン残基それぞれがRipAYの活性化に関与していることが示唆された。さらに、SDS-PAGEのバンドの蛍光染色から、RipAYとTrx-h5は1:2の割合で結合していることが予想された。 しかしながら、RipAYの結晶化解析について、複数のスクリーニングキットを用いて、数百種類もの条件で結晶作製条件の検討を行ったが、Trx-h5-RipAY複合体(ホロ体)及びRipAY単独(アポ体)の結晶の作製には至らなかった。そこで、このアプローチだけで本プロジェクトを進めていくことは難しいと考え、A. citrulli由来のRipAYホモログであるAave_4606を用いることで、RipAYを含めたTrx依存性GGCTの活性化機構について解析を試みている。 そして、昨年度、Aave_4606についてRipAY同様にTrx依存的な活性化機構を解析したところ、Aave_4606は、RipAY同様にシロイヌナズナ由来のTrxであるTrx-h5により活性化されたが、RipAYとは異なり、酵母由来のTrxでは活性化が見られなかった。また、Aave_4606はA .citrulliの宿主であるスイカ由来のTrxによりより強く活性化したことより、Aave_4606が宿主特異性に関わることが期待された。
|
Strategy for Future Research Activity |
RipAYの機能的なホモログであると考えられるA. citrulli由来のAave_4606を用いることで、RipAYを含めたTrx依存性GGCTの活性化機構について解析することを目的とした実験を行う。 本年度は、A. citrulliのAave_4606遺伝子及びⅢ型分泌装置構成遺伝子(HrcC)の破壊株を作製し、破壊株を宿主であるスイカに接種する病原性試験を行うことで、vivoにおけるAave_4606の病原性への関与を調べる。エレクトロポレーションにより遺伝子領域にカナマイシン耐性遺伝子を挿入することで、抗生物質に対する耐性から欠損株を選抜する。播種後4週間のスイカ、メロン及びナスの葉にA. citrulli野生株、Aave_4606欠損株、HrcC欠損株をそれぞれ接種する。接種3日後の病斑の有無を観察し、病原性を評価する。さらに、接種部位を生検トレパンで採取して植物細胞内のGSH濃度を測定することにより、Aave_4606が宿主特異的に活性化するのかを調査する予定である。 また、RipAYとAave_4606ついてアミノ酸配列の比較解析を行い、昨年度得られたRipAYのN, C末端欠損変異体の結果から、Trxの結合及びGGCT活性化に重要な領域を推定し、2つのタンパク質間で差異が見られるアミノ酸残基を変異させた変異体を作製して、Yeast two hybrid (Y2H) 解析や活性測定を行うことで、Aave_4606の宿主チオレドキシン特異的な活性化に重要な領域の探索を試みる。一方で、スイカまたはシロイヌナズナ由来のチオレドキシホモログについても、同様にアミノ酸配列の差から結合に重要な残基を推定し、作製した点変異体を用いたY2Hや活性測定の結果から、Aave_4606との結合に関わる領域の同定を目指す。
|