2018 Fiscal Year Annual Research Report
近年における成層圏西風の弱化要因の解明 -海氷・海面水温の変動が及ぼす力学影響-
Project/Area Number |
18J13564
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
星 一平 新潟大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 北極海氷域変動 / 成層圏 / 惑星波 / 極渦 / ENSO |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に沿って気象庁JRA-55再解析と大気大循環モデル(AFES)を用いた数値実験結果の解析を行なった。この数値実験は、海面水温、海氷分布、温室効果気体、オゾン、準二年振動(QBO)などの観測された強制を与えて1979年から2014年までの再現を、30メンバーで行なったものである。惑星波上方伝播強度と極渦の長期変化傾向をトレンド解析により調べ、特徴を整理、比較した。再解析データで見られた惑星波伝播の強化と極渦の弱化というトレンドは、数値実験30メンバーの全体的な傾向としては見られない結果が得られた。今後はいずれかの強制をオフにした実験との比較を行う事で、各強制の寄与とプロセスを詳しく調べていく。北極域の海氷変動と熱帯太平洋の海面水温変動(ENSO)との複合影響についても研究を行なった。コンポジット解析により冬平均場における惑星波上方伝播への影響を調べたところ、海氷とENSOによる影響は概ね重ね合わせであるという結果が得られた。また研究を行う中で、海氷変動による惑星波上方伝播、極渦への影響はQBOにより変調される事を再解析データから見出した。特に、その海氷変動による影響は成層圏の極渦が弱いQBO東風位相時で顕著に見られ、QBO西風位相時では見られなかった。この特徴は数値実験の結果でも確認された。中緯度域の地上気温に対する影響もQBO東風位相時のみで見られた。海氷変動が大気循環場に及ぼす影響に成層圏基本場依存性がある事を示唆し、気候システムを理解する上で重要かつ本研究の進展にも大きく寄与する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海氷とENSOの複合影響、長期変化傾向に関して計画通り研究を実施した。また、海氷影響のQBO位相依存性に関する研究を当初の予定に加えて実施し、その存在を明らかにした。海氷変動による極渦への影響を理解する上で重要な結果であり、当初の研究目的の達成に大きく貢献する。この結果は論文としてまとめ、投稿する事が出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
海氷影響のQBO位相依存性に関する研究を中心に実施する。この課題は、海氷減少による極渦への影響の評価と近年の極渦弱化傾向の要因を明らかにする上で重要である。特に、QBO位相依存性のメカニズムの解明について取り組む。まずは再解析データと数値実験結果を用いて、QBO位相別の基本場の特徴と海氷変動による大気場応答、基本場と応答の関係の詳細を整理する。加えて、海氷とQBOのみを与えて新たに実施した数値実験の結果も解析する。この実験では、海氷とQBOの影響のみが評価可能であり、メカニズムの解析に適している。熱帯の海面水温変動(ENSO)に関しても位相依存性に着目した解析を実施し、極渦変動への寄与と特徴を調査する。これらの結果を踏まえて、北極域の海氷変動とENSOによる惑星波上方伝播、極渦弱化への寄与についてまとめる。
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Research Products
(6 results)