2018 Fiscal Year Annual Research Report
曲線検出,曲面検出,Vernier課題の相互関係と「ずれ」検出の意義
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18J13674
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
森田 磨里絵 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 曲線検出 / 直線検出 / Vernier acuity |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,「ずれ」の検出が関与していると考えられる,曲線の検出,曲面の検出,Vernier acuity(2つの点や線同士のほんのわずかな「ずれ」を検出する視力)の3つの事象の相互関係,メカニズムの共通性を実験的に検討することである.また,直線や平面といった「ずれ」のない状況を直接的に処理するメカニズムの存在についての検討も行う.本年度は,主に以下に示す2つの実験を行った.
(1)曲線の検出メカニズムとVernier acuityとの関連 曲線検出とVernier acuityのメカニズム上の関連を直接的に検討する実験を行った.実験では,正弦波状の曲線刺激と矩形波刺激の検出閾(直線との弁別閾)をそれぞれ測定した.矩形波刺激は典型的なVernier課題と刺激様相が類似しているため,両刺激の検出閾が同程度であれば,値の類似性から,曲線検出とVernier acuityのメカニズム上の共通性が示唆される.実験の結果,両刺激の検出閾はそれぞれ同程度の値となり,曲線の検出とVernier acuityが空間的なずれの処理メカニズムに媒介されていることを示した.上記の実験を含むこれまでの研究結果は,現在視覚科学分野の国際誌に原著論文として投稿中である. (2)直線検出メカニズムの検討 曲線の検出場面において,直線それ自体を直接的に検出するメカニズムが存在するか否かを,順応の手法を用いて検討した.実験では,直線刺激に対する順応を行った後,直線刺激と曲線刺激を同時に呈示し,どちらのほうがより直線に近く見えたかを回答させた(直線順応条件).その結果,直線刺激に順応した場合の方が曲線の検出感度が上昇し,直線を直接的に検出するメカニズムが存在する可能性を示す結果を得た.この研究成果は,Vision Science Society 2018 Annual Meetingにて報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2次元的なずれである曲線の検出とVenrier acuityとの関連については,直接的な検討を概ね完了し,上記の結果を得ている.報告者は,これまでに行った実験で,僅かな湾曲の検出が曲線の振幅(直線からの空間的なずれ)の処理により行われていることを示す結果を得ている.これらの結果と,本年度行った曲線検出とVernier acuityとの関連についての成果をまとめ,曲線検出の基本メカニズムの報告としてJournal of Visionに投稿し,現在査読のプロセス下にある. また,直線自体の直接的な検出メカニズムの存在を示す結果も得られた.一般に,運動をはじめとする基本的な視覚属性の検出場面では,左方向/右方向のように相反する2つの視覚情報に対する検出器を仮定し,その2つの検出器の反応比を算出することにより行われていると考えられている.そのため,運動が無い,といった「ゼロ」状況を検出する機構は想定されていない.しかし,今回報告した直線刺激に順応した後の曲線検出感度の上昇は,ポジティブ/ネガティブといった2つの湾曲の検出器のみを想定した場合には説明することができず,直線,すなわちずれが無い状態を検出するメカニズムの存在が示唆される.この成果は,他の視覚属性においても「ゼロ」状況の検出器が存在する可能性を示すという点で意味のある結果であると言えるだろう.直線検出メカニズムの基本特性についての予備観察も開始している.以上の進捗状況から,概ね順調に成果が得られていると言えるだろう.
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Strategy for Future Research Activity |
2次元的な湾曲の検出の発展として,3次元的な湾曲面の検出メカニズムについての検討を進める.直線検出メカニズムについては,直線検出メカニズムが異方性を有するか否かなどについて,その特性のさらなる解明を進める.また,直線検出メカニズムの検討においては,本年度の結果から,曲線の検出場面のみならず閾上の知覚場面における新たな展開へと繋がる可能性の高い結果が得られているため,この点についても検討を進める.
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Research Products
(3 results)