2018 Fiscal Year Annual Research Report
システムへの揺らぎを利用した量子アニーリングの誤り訂正
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18J13685
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
西村 光嗣 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 量子アニーリング |
Outline of Annual Research Achievements |
量子アニーリングの誤り訂正の研究において必要となる,量子ダイナミクスの理論的解析において重要な役割を持つ「多準位Landau-Zener理論」に関する研究と,実際の量子アニーリングマシンを量子シミュレータとして用いる研究の2種類の研究を行った.
まず前者の研究に関して記述する.量子項を線形スケジュールで時間変化させた際に量子状態が基底状態から励起状態へと遷移してしまう確率を論じる理論であるLandau-Zener理論を,2準位模型のみならず一般の模型を扱う多準位Landau-Zener理論へと拡張することを試みた.その結果,時間発展の経路を変形する手法を用いて励起状態への遷移確率を近似的に見積もる手法を考案することができた.また,時間発展の経路の変形を可能にする条件が,Shortcuts to Adiabaticity と呼ばれる理論と密接に関わっていることも明らかにした.この手法を量子アニーリングにおけるベンチマークとしてよく用いられる無限レンジ模型に適用した結果,特に非断熱領域においてシュレーディンガー方程式を実際に数値計算した結果とほぼ等しい遷移確率を得ることができたため,考案した手法は理論的なものに留まらず実用的に使える手法であると言えることも判明した.
続いて後者の研究に関して記述する.実際の量子アニーリングマシンを量子シミュレータとして用いることで,Griffiths特異性と呼ばれる物理現象を量子アニーリングマシンで観測する研究を行った.実際に量子アニーリングマシンが理論的に正しい振る舞いをしているかどうかを確認するために量子モンテカルロ法を用いた計算も同時進行で行った.この研究に関しては進行途中であるものの,現時点では理論的に予測される相転移点を実際の量子アニーリングマシンで再現できることが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「多準位Landau-Zener理論」に関する研究に関する成果を論文として発表し,Griffiths特異性を量子アニーリングマシンで観測する研究に関しては着実に進展しているため.
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Strategy for Future Research Activity |
進行中のGriffiths特異性を量子アニーリングマシンで観測する研究を進展させ,量子モンテカルロ法との比較を通じてGriffiths特異性を特徴づける物理量の量子アニーリングマシンによる観測を目指す.
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Research Products
(5 results)