2018 Fiscal Year Annual Research Report
情動音声の認知と神経基盤の解明:ラット発声モデルによる研究
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18J13784
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 優実 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 動物行動 / コミュニケーション / 超音波発声 / 情動音声 / 偏桃体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではラットの情動音声を受容した際の認知的判断・情動的表出・神経活動を調べる3つの実験を計画している。DC2採用一年目における各実験についての進捗を以下に記載する。 ①実験1:様々に音響パラメータを操作した人為的な音声刺激を用意し、それが快情動音声である50kHzUSVと不快情動音声である22kHzUSVのどちらに知覚されるのかを行動実験で測定した。行動実験の結果、周波数帯域が顕著に音声知覚に影響を与え、ついで周波数変調パターン、持続時間の順に影響が大きかった。採用一年目時点において、既に行動実験のための条件づけ、プローブテスト、結果の解析と論文化まで実施し、成果物を既にScientific Reportsに提出済である。 ②実験2:50kHzUSV、22kHzUSVのプレイバック時の心拍変動計測を情動生理指標とし手計測した。また同時に実験1で用いたプローブ刺激に対する心拍変動も記録し、実験1と同様各パラメータの影響を検討した。現在までに16匹のラットからデータを取得し、50kHzUSVでは心拍の上昇、22kHzUSVでは心拍の下降がみられることがわかった。今後サンプル数を増やし、国際誌に成果物を投稿する予定である。 ③実験3:音声に対して選択的に活動する脳部位の特定および各音声に対する個々のニューロンの活動記録を予定している。前者としては、音声を呈示し、神経活動があった際に発現する最初期遺伝子c-fosを蛍光標識することで場所特定を行っている。現在12サンプルから解析を行っているが、特に刺激の評価や情動形成・表出にかかわる偏桃体のうち、規定側坐核、側坐核、中心核に顕著な応答がみられることがわかった。また、後者のニューロン活動記録においては、微細電極埋め込み装置を作成し、データ取得のための準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は三つの実験からなり、そのうちのひとつは既に論文投稿を終えている。また、実験2についてはデータ取得と解析方法を既に確立し、16匹のサンプルからデータを得ている。今後サンプル数を増やし国際誌へ投稿する予定である。実験3については当初はラット島皮質、前帯状回、前頭皮質から単一神経活動記録のみを行う予定であったが、音声に特異的に反応するニューロンが観測できなかったため、最初期遺伝子c-fosの免疫染色を実験計画に加えた。この結果偏桃体核において特に顕著な遺伝子発現がみられたため、こちらをターゲットにした神経活動記録の実施に変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
実験3実施のためにc-fos発現領域を同定したのち、実験計画通り微小電極を刺入して単一神経活動記録を行う。快情動音声(50kHz USV)ならび不快情動音声(22kHz USV)をプレイバックしてUSV選択性ニューロンを探索したのち、パラメータ操作した様々な音声刺激を呈示する。パラメータ操作は、平均周波数、持続時間、周波数変調パターンなどを対象に行う。どのパラメータをどのように操作すればニューロンの発火率が上昇/下降するのかを観測し、偏桃体などの情動系においてUSVを符号化するニューロンが聴覚領域からどのような情報を受けているのかを調べる。
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Research Products
(2 results)