2018 Fiscal Year Annual Research Report
育児ストレスによる情動調節機能低下の機序-睡眠不足・ホルモン動態・脳波の関係
Project/Area Number |
18J13858
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
林 小百合 九州大学, 統合新領域学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | オキシトシン / プロラクチン / 行動抑制 / 情動 / 脳波 / 表情筋筋電図 / 月経周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、乳幼児の母親の情動調節機能が、睡眠不足といった育児ストレスに阻害される可能性を検討することを目的とした。また、育児ストレスが情動調節機能を阻害する生理的背景として、情動調節機能とオキシトシンやプロラクチンといったホルモンとの関連についても検証することとした。
本年度は、上記の目的を達成するために、情動調節機能とオキシトシン・プロラクチンの関連を検討した。妊娠や出産、授乳による生理・心理的経験の影響を制御するために、対象は妊娠経験のない女性とした。正常な月経周期を有する女性では、月経周期のフェーズによってオキシトシン・プロラクチン濃度が変動することを利用し、卵胞期と黄体期のそれぞれで計測を行った。
解析では、衝動的な行動の制御とオキシトシン・プロラクチンの関連の検討に重点を置いた。具体的には、幼児の顔表情を阻害刺激として用いた行動抑制課題時の脳波・行動成績と、血漿オキシトシン・プロラクチン濃度との関連を検証した。幼児怒り顔による一部の抑制に関する脳処理の遅延と、プロラクチン濃度との関連を認めた。また、行動抑制課題の成績の良さとオキシトシン濃度に関連があった。これは、幼児怒り顔による一部の抑制処理の阻害がプロラクチンと何らかの関連がある一方で、衝動的な行動の制御はオキシトシンと関連する可能性を示す。衝動的な行動の制御は、子ども虐待のリスクと関連することが報告されている。本研究の示すオキシトシンと行動抑制課題成績の関連は、子どもの養育におけるオキシトシンの役割を示唆する有用な知見である可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、妊娠経験のない女性を対象とした実験と学会等での成果発表、および乳幼児の母親を対象とした実験準備を予定していた。
妊娠経験のない女性を対象とした実験は終了し、いくつかの解析は残っているものの、情動や行動制御に関連するプロセスとオキシトシン、プロラクチンの関連を示す研究成果を得た。また、乳幼児の母親を対象とする実験にも着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、母親群を対象とした実験を行う。実験終了後は、情動や衝動抑制とオキシトシン・プロラクチン、睡眠不足を含む育児ストレスとの関連についての統計解析を予定している。
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