2018 Fiscal Year Annual Research Report
ウシ卵管上皮を構成する分泌細胞の多様性とその分化能
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18J14047
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
伊藤 さやか 岡山大学, 環境生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 卵管上皮 / 繊毛形成 / 細胞分化 / 発情周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
卵管上皮は配偶子・初期胚の輸送を促す繊毛細胞と、初期胚発生に必要な物質を分泌する分泌細胞 (非繊毛細胞) から構成され、両細胞の割合は発情周期を通じて変化する。申請者らは、繊毛細胞数が増加するにもかかわらず増殖するのは非繊毛細胞のみであることを明らかにしており、非繊毛細胞が繊毛細胞へと分化することを示唆してきた。卵管と同様に繊毛・非繊毛細胞を有する気管においては、非繊毛細胞には複数のタイプが存在し、その一部の細胞が繊毛細胞に分化することが報告されている。しかし、これまでに卵管において複数の非繊毛細胞の存在は報告がなく、繊毛細胞への分化過程も定かでない。本研究では、卵管上皮細胞の詳細なキャラクタリゼーションを行うことにより、ウシ卵管における非繊毛細胞から繊毛細胞への分化経路を検討した。 発情周期を通じたウシ卵管膨大部上皮組織におけるKi67, Acetylated tubulin (Ac tubulin), FOXJ1およびMYB, PAX8の共局在を免疫組織化学により検討し、上皮組織内腔表面1mmあたりに存在する細胞数の変化を調べた。 全ての卵管上皮細胞はPAX8かFOXJ1を発現し、共発現する細胞は存在しなかったが、FOXJ1+細胞中にはAc tubulin+細胞とAc tubulin-細胞が存在した。また非繊毛細胞中にはMYB+/PAX8+またはMYB+/FOXJ1+細胞が存在し、MYB+/Ki67+細胞は認められなかった。Ki67+, MYB+およびFOXJ1+細胞数は卵胞期に増加したため、この時期に細胞増殖と繊毛形成が同時に進行することが示唆された。以上より、卵管上皮細胞は形態学的には繊毛細胞と非繊毛細胞に大別されるが、免疫組織学上非繊毛細胞は複数存在し、ウシ卵管上皮においても非繊毛細胞から繊毛細胞への段階的な分化経路が存在することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
繊毛・分泌細胞マーカーならびに、繊毛形成関連因子を用いた、卵管上皮細胞のキャラクタリゼーションを行うことにより、以下のことが明らかとなった。全ての卵管上皮細胞はPAX8かFOXJ1を発現し、共発現する細胞は存在しなかったが、FOXJ1+細胞中にはAc tubulin+細胞とAc tubulin-細胞が存在すること。このことから、非繊毛細胞中にはPAX8+細胞とFOXJ1+/Ac tubulin-細胞が存在することが明らかとなった。また非繊毛細胞中にはMYB+/PAX8+またはMYB+/FOXJ1+細胞が存在し、MYB+/Ki67+細胞は認められなかった。Ki67+, MYB+およびFOXJ1+細胞数は卵胞期に増加すること。このことから、卵胞期に細胞増殖と繊毛形成が同時に進行することが示唆された。以上より、卵管上皮細胞は形態学的には繊毛細胞と非繊毛細胞に大別されるが、免疫組織学上非繊毛細胞は複数存在し、ウシ卵管上皮においても非繊毛細胞から繊毛細胞への段階的な分化経路が存在することが示された。 上記の結果のように当初の計画どおり、ウシ卵管上皮構成細胞のキャラクタリゼーションが完了し、非繊毛細胞から繊毛細胞への分化経路の予測も進んでいることから、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、ウシ卵管上皮には複数の非繊毛細胞が存在すること、並びに卵管上皮構成細胞は、発情周期に合わせて変化することを明らかにしている。さらに、非繊毛細胞から繊毛細胞への分化経路も推測できている。そこで本研究では、非繊毛細胞の繊毛細胞への分化能の検討を培養細胞を用いて行い、実際に予測通りの分化経路を辿っているのかを検討する。 ウシ卵管上皮より単離した細胞をAir-liquid interface culture 法を用いて培養し、これまでの結果より明らかとなった分化経路が実際に生じるかを検討する。繊毛細胞への分化の証明は、免疫細胞染色による acetylated-α-tubulin タンパク質発現および、走査型顕微鏡での繊毛形成により行う。またこれまでの結果より、細胞分化には生理環境(内分泌および局所因子)が影響していることが考えれられる。そのため、本研究では各発情周期の卵管液およびステロイドホルモンを添加することで生体内を再現し、分化能の検討を行う。
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Research Products
(2 results)