2018 Fiscal Year Annual Research Report
ハイドレートメルト電解液の安定化機構に関する理論的研究
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18J14097
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮崎 かすみ 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | SEI膜 / Liイオン二次電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
電気自動車等の大型用途の需要により、Liイオン電池の安全性・性能向上が望まれている。そこで鍵を握るのが、電解液成分の還元生成物が堆積することにより形成される不動態被膜である。電解液成分の過剰な分解を抑制し、耐久性を高めるためには安定な被膜の形成が条件となる。しかしながら、電解液を構成する物質の物性と被膜の形態との関係はほとんど明らかにされていない。 そこで、溶媒分子の物性と被膜の形態との関係を見出すことを研究目的とし、2つの環状カーボネート、trans-ブチレンカーボネート(t-BC)とcis-ブチレンカーボネート (c-BC)に着目した。これらのカーボネートは幾何構造異性体同士で単分子としての性質はほぼ同一にもかかわらず、Liイオン電池の電解液溶媒として用いると、前者では充放電可能・後者では不可能という違いが生じる。被膜の生成過程をシミュレーションにより明らかにし、t-BCとc-BC溶媒における被膜の構造の違いおよびその起源解明を試みた。 シミュレーションの結果、t-BC電解液中に比べ、c-BC電解液中では被膜の密度が低く、不安定化していることが分かった。また、c-BCの溶媒和はt-BCよりも強く、被膜の成分生成を阻害していることが明らかになった。単分子的性質が酷似していても、凝集層では溶媒和の強さが異なり、被膜の形成過程・安定性といった巨視的物性に大きく影響することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハイドレートメルト電解液に対する被膜形成過程の研究を予定していたが、研究対象を有機電解液に変更した。その理由として、被膜形成過程の基礎的な理解を進めるという観点から、有機電解液溶媒のtrans-ブチレンカーボネートとcis-ブチレンカーボネートは重要な事例であり、被膜形成過程と溶液物性との関連を追及するという目的に相応しいと考えたためである。結果として、従来では明らかになっていなかった反応中間体に対する溶媒和相互作用の強弱が被膜形成過程に与える影響を明らかにすることができ、本研究の最終目的につながる知見を得ることができた。また、その成果を国内・国際学会および学術論文として発表するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
ハイドレートメルト電解液の溶液構造と電子構造を分子シミュレーションにより解明し、安定性の要因についての考察を行う。対象とする系は本研究室の実験チームにより開発中のハイドレートメルト電解液とする。また、本研究室でのハイドレートメルト電解液の開発が進んでいることに鑑み、新たなハイドレートメルト電解液についてシミュレーションを進め、溶液物性の解明に重点を置き、新規性の高い研究を目指す。さらに、分子シミュレーションに関しても外部の専門家と共同研究を行い、議論を深めることで、理論的にも質の高い研究を目指す。
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Research Products
(5 results)