2018 Fiscal Year Annual Research Report
負荷側高分解能エンコーダを用いた電気自動車の力制御に関する研究
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18J14169
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
延命 朋希 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 力制御 / インホイールモータ / 電気自動車 / センサ分解能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はおおむね,以下の3点に関する研究を行った. (1)減速機付きのインホイールモータ(IWM)には,減速機を挟んでモータ側(駆動側)と負荷側(車輪側)にねじれやギアのあそび(バックラッシ)が存在し,これはIWMの特徴である高い推定・制御性能の劣化につながる.従来の減速機付きのIWMではモータ側の角度のみを推定や制御に用いていたが,本研究では負荷側にエンコーダを装着し,これを用いることでバックラッシや軸ねじれによる推定性能の劣化を抑制した.本研究では特に,負荷側エンコーダを用いたスリップ率の推定を行い,駆動側のみの場合に比較して大幅な性能の改善が見られることをシミュレーションと実験によって確かめた. (2)電気自動車の力制御を行うにあたって,前後方向だけでなく横方向の外力を推定することは必要不可欠な要素である.一方で,各輪のIWMに働く前後力の情報のみを用いて横方向の外力を推定することは不可能である.本研究では,ステアリングにはタイヤ横力に応じたモーメント外力が働いていることに着目し,パワーステアリング内部のモータに外乱オブザーバを適用して各輪のタイヤ横力を推定した.また,拡張カルマンフィルタを用いて車両に働く横外力を推定する実験を行い,その有効性を確認した. (3)陸空両用ドローンの外力推定手法の研究に従事した.車輪に付帯したエンコーダを積極的に利用することで,より高性能な外力の推定や接触点の同定手法を提案し,接触ベースのナビゲーション手法が可能であることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,車両に働く横方向外力の推定・制御や接触点同定といった推定・制御手法の他,負荷側エンコーダを積極的に用いた推定手法,バックラッシ補償制御,必要エンコーダ分解能の理論的予測に関する研究等はすでに検討を終えている.計画されていた位置と力のハイブリッド制御手法に関する研究は,完了には至っていないものの理論的な検討やアプリケーションの選定についてはある程度の目途が立っている.場合によってはシミュレーションや実機での検討については同研究室内の他の学生に委託することも検討しているが,現時点では申請者自身が検討を進める予定である. 計画外の出来事としては,現時点では当初計画にあった力制御手法の理論的な体系化の面では大きな進展は得られていない.また,オンボードモータ方式の実験機の構築については議論に上がったもの,実現困難との結論に至り断念した.一方で陸空両用ドローンへの外力推定手法の適用やエンコーダ分解能の理論的予測法の適用といった新たなアプリケーションの開拓に成功したことが挙げられ,当初の予定では検討されていなかったという意味で計画以上に進捗している側面もある. このように,当初の研究計画において予定されていた事項についてはおおむね検討を終えているが,いくつかの研究テーマにおいては計画以上に進展しているケースも存在し,計画に比べて遅れが生じているケースや検討の結果企画されたケースも存在する.以上の事情から,博士研究全体としてはおおむね順調に進展していると評価するのが妥当と考えた.
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Strategy for Future Research Activity |
順調に進行しているテーマ(おおむねすべて)においては実証性が確認されているため,必要に応じて適切な実験による実証を追加で行い,学会発表や論文誌を行うことで研究成果をまとめ,完遂していく. 計画に比較して遅れが生じているモビリティの力制御系の理論的な設計法に関しては,LMIベースのアプローチが可能と考えており,そのような方向性での検討を進めていくが,追加課題とみなして上記研究テーマと並行して進めていく. 検討が開始されているハイブリッド制御関連のテーマについては,場合によっては研究室内の他の学生に協力を要請しつつ進めていく予定ではあるが,現時点では申請者自身の手で遂行していく予定である. 年次計画としては4月~7月にかけては自動車横方向の外力の検出と制御および減速機方式IWMのスリップ率制御について研究をまとめ,論文誌への投稿を目指す.8月~12月はハイブリッド制御の適用やバックラッシ補償制御や分解能・力制御の一般論に関する研究をまとめ,1月~3月にはそれまでの研究の見直しや総括を行うことを予定している.
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Research Products
(3 results)