2018 Fiscal Year Annual Research Report
隕石の超高精度多元素同位体分析に基づく初期太陽系の物質科学進化に関する研究
Project/Area Number |
18J14186
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
深井 稜汰 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | コンドライト / 同位体 / 初期太陽系 / 木星 / 惑星形成 / 隕石 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度(採用1年目)の研究計画として、コンドライト隕石全岩・分化隕石全岩のSr同位体分析を行うことを目標に掲げた。一部予定を変更し、測定する試料をコンドライト隕石全岩(15種類程度)に絞り、同一粉末試料からSr・Nd同位体分析を行った。結果として、いくつかの新たな知見が得られた。まず、全ての種類のコンドライト隕石(エンスタタイトコンドライト・普通コンドライト・炭素質コンドライト)は、地球とはわずかに異なるSr・Nd同位体組成(同位体異常)を持つことがわかった。更に、エンスタタイトコンドライト・普通コンドライト(非炭素質コンドライト)のSr・Nd同位体異常は比較的小さく、対して炭素質コンドライトのSr・Nd同位体異常は大きいことがわかった。最終的に、地球・非炭素質コンドライト・炭素質コンドライトのSr・Nd同位体異常は、初期太陽系星雲におけるプレソーラーSiCの不均質分布を起源とすることが明らかになった。この結果から、初期太陽系ではプレソーラーSiCなどの粒子を選択的に破壊する加熱過程が起きていたと結論付けた。更に、炭素質コンドライト間の同位体組成のバリエーションを説明するために、木星の圧力勾配によって炭素質コンドライトの形成領域にのみダストが濃集するモデルを新たに構築した。この結果はGoldschmidt conference, Lunar and Planetary Science Conferenceという2つの大規模な国際学会で発表された。更に、国際誌Astrophysical Journalに2019年掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初掲げた目標は、隕石全岩に対して4つの元素の同位体比測定(Sr・Nd・Sm・Yb)を行い、その関係性を議論することであった。採用1年目では、そのうち2つの元素(Sr・Nd)の同位体比測定を終え、ここまでの成果を国際誌Astrophysical Journalに発表することができた。更に、Sm・Yb同位体分析についても予察的な実験に取り組むことができた。以上より、計画はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
隕石全岩のSm・Yb同位体分析を行う。今年度は、地球由来の標準岩石試料を用いて、元素分離・同位体分析を繰り返し行い、分析行程の確立を試みた。一部岩石試料のSm・Yb同位体組成には、化学分析上で起きる非質量依存同位体分別の影響が見られた。隕石試料に適用する前に、この同位体分別が分析確度に与える影響を検討する必要がある。Sm・Yb同位体分析法について次年度引き続き開発を続ける。 さらに、Sr・Nd同位体異常の研究より、隕石全岩の同位体異常の原因はプレソーラー粒子の不均質分布であることが明らかになった。プレソーラー粒子は隕石中に含まれているが、含有量がごくわずかなことからその同位体比データは不足している。プレソーラー粒子の重元素同位体比を測定することは技術的に困難であるが、次年度、LA-ICP-MSという装置を用いて、その足掛かりとなる研究に着手する予定である。
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Research Products
(5 results)