2018 Fiscal Year Annual Research Report
稀突起膠細胞腫の発がん機構の解明に向けた比較生物学的解析
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18J14206
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岸本 拓也 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | イヌ / 神経膠腫 / 稀突起膠細胞腫 / 腫瘍幹細胞 / 稀突起膠細胞前駆細胞 / 細胞培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
稀突起膠細胞腫の発生メカニズムや病態には未解明な点が多く残されており、由来細胞が不明であることもその一つである。これまでの研究により、イヌの稀突起膠細胞腫の発生頻度はヒトと異なり非常に高く、また、短頭種に好発することが判明した。そのため、ヒトで得られにくい知見がイヌから得られる可能性が高いと考えられる。本年度は、(1)イヌの稀突起膠細胞腫の病理組織学的解析、(2)稀突起膠細胞腫細胞株の樹立および(3)腫瘍幹細胞(TIC)の性状解析を中心に研究に取り組んだ。 イヌの退形成性稀突起膠細胞腫の組織標本27例を免疫組織化学的に検討したところ、本腫瘍細胞は高率に稀突起膠細胞前駆細胞(OPC)マーカー(Olig2, SOX10, PDGFRα, NG2)を発現していた。また、フレンチ・ブルドッグから得られた退形成性稀突起膠細胞腫の培養細胞について、細胞形態、免疫表現型や腫瘍形成能などの性状を明らかにし、株化細胞として樹立した(株名:AOFB-01)。さらに、この株化細胞に神経幹細胞用成長因子またはOPC用成長因子(OPC-GF)を加えて浮遊培養したところ、いずれもスフェロイドの形成が認められた。連続継代したところ、OPC-GF添加培地でのみスフェロイドが形成された。これらの結果から、イヌ退形成性稀突起膠細胞腫のTICはOPC-GFの添加により自己複製能を維持することが判明した。また、形成されたスフェロイドはOPC-GF添加培地での培養ではOPCマーカーのみを発現して未分化性を維持していたのに対し、分化誘導(血清添加培養)を行うと、GFAPも発現し、多分化能を示すことも明らかとなった。これらTICの細胞性状はOPCのそれと類似していた。以上のことから、イヌの退形成性稀突起膠細胞腫はOPCに由来することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、(1)イヌの稀突起膠細胞腫の病理組織学的解析、(2)イヌ稀突起膠細胞腫細胞株の樹立(AOFB-01株)および(3)株化細胞における腫瘍幹細胞(TIC)の性状解析を中心に研究に取り組み、十分な成果が得られた。なかでも、病理組織学的解析および腫瘍幹細胞(TIC)の性状解析により、本腫瘍が稀突起膠細胞前駆細胞(OPC)に類似した性質を有していることを示した。これは、本腫瘍の病態解明を解明するうえで、重要な知見である。 さらに、関連する研究としてイヌの頭蓋内腫瘍の疫学的調査も行い、各脳腫瘍の好発犬種を明らかにした。特定犬種に好発する腫瘍は、その発生に遺伝的背景が示唆されるため、次年度で行う稀突起膠細胞腫の原因遺伝子を特定するうえで本研究の結果が有用になると考えている。 これらの成果は国内外の学術集会で報告し、英文雑誌に投稿済みまたは投稿準備中である。以上を鑑み、十分な進捗状況と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
イヌの稀突起膠細胞腫の発生に関わる遺伝子異常は解明されていないため、次年度では腫瘍組織および樹立した培養細胞を用いて、分子発生メカニズムについてヒトの稀突起膠細胞腫と比較しながら解析する。まず、DNAマイクロアレイによる網羅的な解析を行い、得られた結果を定量的PCR、in situ hybridization等により確認する。また、フレンチ・ブルドッグに稀突起膠細胞腫が好発する遺伝的素因について、次世代シークエンサーを用いて解析する予定である。
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Research Products
(10 results)