2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J14323
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀上 大貴 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 急性肺障害 / 血管透過性 / 血管内皮細胞 / 肺胞上皮細胞 / リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素 / プロスタグランジンD2 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、急性肺障害におけるL-PGDSの役割とその機構の検討を目的として、研究を行った。 塩酸投与による誤嚥性急性肺障害モデルで、野生型マウス群に呼吸機能低下が認められた。一方、L-PGDS またはH-PGDSの遺伝子欠損マウス群では両系統ともに悪化した。急性肺障害の病態(浮腫形成・好中球浸潤)を定量的に評価したところ、両方が認められた野生型に比べ、L-PGDS欠損群では浮腫形成のみ悪化し、H-PGDS欠損群では好中球浸潤のみが悪化した。 肺組織の免疫染色において、L-PGDSは上皮細胞と内皮細胞に強く発現が認められたが、H-PGDSは血球細胞に強い発現が観察された。上皮内皮細胞由来L-PGDSの重要性を検討するため、放射線照射による骨髄細胞の死滅と移植によりキメラマウスを作成した。このマウスに塩酸を処置したところ、WTマウスにL-PGDS欠損骨髄を移植しても出血の範囲・酸素飽和度・浮腫形成の指標である肺水分含有量が悪化せず、L-PGDS欠損マウスにWT骨髄を移植しても諸症状の改善が見られなかった。 L-PGDS由来PGD2が浮腫形成を抑制していた結果から、血管透過性亢進におけるPGD2シグナルを検討した。塩酸処置の肺において静脈内投与した青色素の漏出が観察され、血管透過性の上昇を示したが、L-PGDSの欠損はそれを悪化させた。さらに、PGD2の受容体の一つであるDP受容体の作動薬を前処置すると、その悪化した漏出を有意に抑えた。 以上の研究によりL-PGDSは急性肺障害を改善することが明らかになった。その中で、塩酸処置により上皮内皮細胞で発現したL-PGDSはPGD2産生を介してDP受容体依存的な浮腫形成抑制を引き起こすことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究により急性肺障害におけるL-PGDSの役割とその病態形成メカニズムを明らかにすることができたため。 また、L-PGDSが肺組織での炎症において、血管の透過性を抑制することで炎症を抑制させるという新しい発見を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後とも引き続き様々な疾患における血管に着目し、その病態における役割を明らかにするとともに、血管を標的とした新たな治療因子を探索していきたい。
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