2018 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトリボヌクレアーゼH2の遺伝性変異がゲノム安定性に及ぼす影響の解析
Project/Area Number |
18J14339
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
馬場 美聡 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | ゲノム修復 / 遺伝性変異 / リボヌクレアーゼH2 / 基質特異性 / ゲノム編集 / 組換え酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
リボヌクレアーゼH 2(RNase H2) は、RNA/DNAハイブリッドのRNA鎖(基質A)と二本鎖DNAに埋め込まれた1塩基のリボヌクレオチド(基質B)を分解する。RNase H2はゲノム修復に関与しており、ヒトではRNase H2の遺伝性変異が疾患に関連する。本研究の目的は、RNase H2の遺伝性変異が「酵素化学的性質」および「ゲノム修復効果」に与える影響を解析し、本酵素の構造と機能の関係を明らかにすることである。そのために、①ゲノムプロフィリング法による変異原アッセイ(GPMA)法によるRNaseH2のゲノム修復効果の評価、②遺伝性変異を有するヒトRNase H2の酵素化学的性質の解析、③ヒトRNase H2の基質特異性の改変に取り組むことを研究目的とした。 研究目的①については、マウスNIH3T3株に対し、ゲノム編集技術によりRNase H2遺伝子欠損株を樹立した。続いて、欠損株のRNase H活性およびゲノムに蓄積されたリボヌクレオチド量を解析した。さらに、欠損株を変異原物質存在下で培養し、その培養細胞から抽出したゲノムを用いて変異の受けやすさをGPMA法により評価した。 研究目的②については、遺伝性疾患患者が有すると報告されているヒトRNase H2の遺伝性変異を6種類選抜し、これらが導入された組換えヒトRNase H2を大腸菌を宿主として調製し、活性と安定性を評価した。 研究目的③については、基質B分解活性を保持したまま、基質A分解活性を消失した変異体の取得を試みた。RNase H2 のX 線結晶構造解析から基質の切断される結合の5’側ヌクレオチドの糖の部分にVal143が近接していた。基質Aと立体障害により、基質A分解活性が消失すると考え、Val143を他の19種類のアミノ酸に置換した変異体を大腸菌を宿主として調製し、活性を測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的①については、当初の目的であるマウスNIH3T3株のRNase H2遺伝子欠損株(KO)を樹立し、性状解析を行った。野生株(WT)とKOのRNase H活性およびゲノムに蓄積されたリボヌクレオチド量を解析した結果、KOではRNase H2に特異的な活性である、基質B分解活性が消失していた。また、WTに比べてKOで、ゲノム中に顕著なリボヌクレオチドの蓄積が確認された。さらに、WTとKOを変異原物質であるベンゼンあるいは硫酸ジエチル存在下で培養し、変異の受けやすさをGPMA法により評価した。その結果、KOはWTに比べて、低い変異原性を示した。これは、RNase H2がノックアウトされたことによって起こると考えられている修復経路が働いたためと推察した。 研究目的②については、ヒトRNase H2のA、B、Cサブユニットにまたがる6種類の遺伝性変異を選抜し、大腸菌を宿主として組換え体を調製した。AサブユニットのG37S(A-G37S)の基質A、基質B分解活性はそれぞれ、WTの0.3、1%であり、著しく低下した。一方、他の変異体の活性はWTの50~120%で、WTと同程度であった。この結果から、A-G37Sは酵素活性を低下させるが、他の変異は低下させないことが明らかとなった。 研究目的③については、V143Wの基質A分解活性はWTの5%であり顕著に低下したが、基質B分解活性は26%であった。このことから、V143WはWTに比べて基質Aより基質Bを好むように基質特異性が変化したと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下二点の研究を推進する。研究目的①遺伝性変異を有する組換えヒトRNase H2の酵素化学的性質およびゲノム修復効果の解析、②ヒトRNase H2の基質特異性の改変である。研究目的①の酵素化学的性質の解析においては、昨年度に調製した6種類の遺伝性変異を導入した組換えヒトRNase H2を用いて、蛍光基質およびRI標識基質を用いた活性測定、一定時間の熱処理による不可逆的熱失活の測定、円偏光二色性スペクトルによる二次構造の測定、ゲルろ過による四次構造の測定を行う。また、ゲノム修復効果の解析においては、昨年度に樹立したRNase H2遺伝子欠損NIH3T3株で、遺伝性変異を導入したRNase H2を一過的に発現させ、RNase H活性およびゲノムDNAに蓄積されたリボヌクレオチド量を測定する。さらに、自己免疫応答やDNA損傷応答に関与する遺伝子の発現量を解析する。続いて、これらの細胞株を変異原物質存在下で培養し、その培養細胞から抽出したゲノムを用いて変異原物質による変異の受けやすさをGPMA法により評価する。 研究目的②については、昨年度創製した基質B分解活性が基質A分解活性より高い変異体であるV143W等について、酵素化学的解析を行う。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Construction and characterization of ribonuclease H2 knockout NIH3T3 cells2019
Author(s)
Tsukiashi, M., Baba, M., Kojima, K., Himeda, K., Teisuke T., and Yasukawa, K.
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Journal Title
The Journal of Biochemistry
Volume: 165
Pages: 249-256
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Accurate fidelity analysis of the reverse transcriptase by a modified next-generation sequencing2018
Author(s)
Okano, H., Baba, M., Hidese, R., Iida, K., Li, T., Kojima, K., Takita, T., Yanagihara, I., Fujiwara, S., and Yasukawa, K.
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Journal Title
Enzyme Microbial Technology
Volume: 115
Pages: 81-85
DOI
Peer Reviewed
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