2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18J14387
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 悠一郎 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | エネルギー地形 / 配置空間 / 量子化学計算 / 距離幾何学 |
Outline of Annual Research Achievements |
化学反応では,分子の構造変形や原子間の結合の組み替えにより,ある異性体が別の異性体へと変化していく.これはポテンシャルエネルギー面上の極小点と別の極小点,そしてそれらを結ぶ一次の鞍点によって特徴付けられる. これら極小点や鞍点の数は,分子の内部自由度が増えるにつれ指数関数的に増大することが知られている.そのため,分子は一般に多数の異性体を持つ.この理由から,分子の異性体や化学反応経路を網羅的に調べ上げることは難しいとされる.
本年度は,分子の構造の大域的探索を行うことを目的とした,距離幾何学に基づく探索アルゴリズムの開発に取り組んだ. 分子構造の一表現として,全ての原子間の距離を表す行列,すなわち距離行列に注目し,配置空間上に大量の初期構造を発生させる方法を開発した.三次元直交座標空間と距離空間は同等ではなく,後者はより高い次元性を有する.これは実際に構造探索を行う上で利点となりうるが,距離空間における分子構造を三次元空間へ射影しなければならず,欠点でもある.距離空間に関するこのような欠点を解消するべく,計算方法について検証を重ねた.そして実装したアルゴリズムを用いクラスター分子など複数の分子系に適用し,有用性を確かめた.また,炭素含有アルミニウムクラスターの安定構造探索にこの手法を応用し,様々な大きさのクラスターについて,先行研究では見出されていなかった最安定構造を見つけ出すことに成功している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初は隣接行列に基づく分子のグラフ理論的表現に注目し研究を行っていたが,分子構造の具体的な座標表現を得るに至らなかった.その過程で原子間距離を表現する距離行列について学び,NMRによる構造解析などの先行研究について調べ上げ,距離幾何を応用した構造探索を実現するに至った.当初の計画通りではなかったが,より具体的な分子構造の表現に至り上記の成果を挙げることが出来たため,概ね順調である.
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Strategy for Future Research Activity |
開発中のアルゴリズムをさらに発展させ,化学反応への応用に取り組む.大域的に拾い上げた分子構造と電子状態の変化に注目し研究を進めていく.
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Research Products
(5 results)