2018 Fiscal Year Annual Research Report
自閉スペクトラム症の症状形成における感覚の影響 -こだわりとの関連に注目して-
Project/Area Number |
18J14391
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
信吉 真璃奈 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
|
Keywords | 自閉スペクトラム症 / 感覚特性 / こだわり行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,18歳以上の自閉スペクトラム症者 (Autism Spectrum Disorders; 以下,ASDと表記する) 14名に半構造化面接を実施して得られたインタビューデータをもとに分析を行った。本研究のリサーチクエスチョンである「ASDの限局的な反復行動などこだわり行動と,知覚フィルタリング異常である感覚ゲート異常や『ASD特有の感覚』といった感覚特性がどのように関連するか」に関して,グラウンデッド・セオリー・アプローチを参考に質的に分析した。 その結果,ASDの感覚ゲート異常や,本研究が独自に着目した「ASD特有の感覚」がもとになり,例えば「動画を見る際,特定のシーンの音をたくさん聞いて,満足できたら先に進む」といった形で,感覚的なこだわり行動に繋がっていることが明らかになった。さらに,ASDに一定数見られる共感覚に関しても,「共感覚で見える色に従って本を並べ,順番を崩されると苦痛を感じる」という趣旨の語りが得られ,感覚ゲート異常や「ASD特有の感覚」同様にこだわり行動に繋がっている可能性が示唆された。そのため,ASDの感覚特性を包括的に扱い,こだわり行動との関連を考察した。また「ASD特有の感覚」に関しても「感覚でいっぱいになる」などの因子が示唆されている。 今後は,予備調査による「ASD特有の感覚」の因子の精査とともに,大学生を対象にした尺度の標準化と,ASD者を対象に「『ASD特有の感覚』がASDの中核症状であるこだわり行動を予測する」という仮説に関して,検証を進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,研究計画に則り,自閉スペクトラム症者へのインタビュー分析を行い,一定の成果を得られた。 しかし,年度後半は博士論文執筆・修正・発表に時間を要し,計画スケジュールに沿った研究の実施が叶わなかった。そのため,本来の計画ではインタビューデータの分析により尺度の作成・標準化まで行う予定であったが,因子構造に関して示唆を得るにとどまり,具体的な作業は来年度に持ち越しとなった。 以上を鑑み,研究に遅れが生じているものの,計画に沿って一定の成果は得られていることから,「(3)やや遅れている」が妥当であると考えられた。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は,予備調査による「ASD特有の感覚」の因子の精査とともに,大学生を対象にした尺度の標準化を行う。これにより,質問紙において「ASD特有の感覚」を定量化できるようにしたのち,ASD者を対象に「『ASD特有の感覚』がASDの中核症状であるこだわり行動を予測する」という仮説に関して,質問紙調査を実施し,検証を進める。 上記の成果を総括し,学術論文として投稿・採択を目指すのが来年度の目標である。
|
Research Products
(4 results)